離婚後に財産分与及び特有財産の返還が問題になったケース
■紛争の内容
ともに30代のご夫婦(共働きで、お子さんはいらっしゃらない)
夫からのDVがひどく、妻は夫のいないすきに、最低限の荷物を持って家を出ました。
その後、郵送のやり取りで離婚届けに署名・押印をもらって役場へ提出。
このように、離婚が成立した後、夫が弁護士に依頼のうえ、妻に対し財産分与の請求をしてきたため、妻からの依頼を受けてその代理人となりました。

■交渉・調停・訴訟などの経過
夫は、主に、妻が管理していた生活費口座の預金の2分の1と、夫婦が飼っていた血統書つきの犬2頭(購入金額約60万円)を引き渡すよう要求してきました。
妻としては、生活費口座の2分の1を支払うことに異存はなかったものの、犬については妻自身の蓄えで購入したものであったので、引き渡しを拒絶しました。
代理人を通じて交渉しましたがまとまらず、夫側から財産分与の調停が申し立てられました。
また、話合いの中で、妻が自宅に残してきた荷物(親の形見を含む大切なもの)の返還をお願してきましたが、夫が、犬との交換でないと返さないとの態度を示し続けたため、妻側からは特有財産の返還を求める調停を申し立てました。

■本事例の結末
1 財産分与
妻から夫に、生活費口座の預金のうち2分の1の金額を支払うということで、調停が成立しました。
なお、犬2頭については、夫が強く権利を主張したものの、妻が独身時代に貯めた自分の預金口座から購入していることの証拠(代金支払いに使用したカードの当時の明細書、カード引き落としの金額が印字された通帳)を提出し、妻の特有財産であることが認められました。
2 特有財産返還
財産分与の決着前後して、夫が、期日間での荷物の引き取りを承諾したため、実際に荷物を引き取った後、調停申立を取下げました。

■本事例に学ぶこと
妻によると、夫は、同居期間中、特に犬をかわいがることもなく、散歩や餌やりといった日常の世話も全て妻が行っていたとのことです。そうであるにもかかわらず、離婚後の財産分与の場面で、夫が犬に関してこれほどの執着を見せたのはなぜなのか(自分のもとから逃げ去った妻への意趣返しなのか)疑問が残る事案でした。