相川弁護士

親権には、子供を養育・監護する身上監護権と、子供の財産を管理する財産管理権があります。
未成年の子供がいる場合、離婚後の親権者を夫婦のどちらにするか決めなければ離婚はできません
これは、離婚した場合、どちらかの単独親権となるためです。
とりあえず、離婚だけを行って、子の親権者の決定・指定は後で決めるということはできません。
夫婦間の合意で親権者を指定できないときは、協議離婚の届出ができないので、調停や裁判等で親権者を定めることになります。

親権者の決め方

夫婦で話し合って、親権者が決まらない場合、調停や裁判における基準には以下の3つが
あります。

①監護の継続性(現実に子を養育監護しているものを優先する)
②母親優先(乳幼児について母の監護を優先させる)
③子の意思の尊重(15歳以上の未成年の子についてはその意思を尊重する)

一昔前には夫=父親を親権者、妻=母親を監護権者とするケースが多かったのですが、最近では、親権者として様々な事柄を決めるのに、別れた夫に決定してもらわなくてはならないことの煩雑さを敬遠する等の理由から、親権者・監護権者とも、特に乳幼児については妻=母親とするケースが圧倒的に多くなっています。

繰り返しになりますが、子どもを離婚後も夫婦の共同親権とすることはできませんので、必ず夫婦の一方が親権者となります。
従って、最終的に裁判になると、微妙な差であっても、どちらかに軍配が上がることになります。従って、慎重に主張を組み立て、立証していくことが必要になります。

親権者の変更

離婚時に決めた親権者を変更できるか?といったご相談もよく頂きます。結論から言いますと、子の利益とならないと認められた場合、親権者の変更は可能です。
しかし、一旦、親権者が決まっている訳ですから、変更後に、子供にとっての利益が同程度と判断された場合には、変更は認められません。
離婚時に親権者を決める場合と違って、変更はかなり難しいと思ってください。

手続としては、子の住所地を管轄する家庭裁判所に、親権者変更の申立を行います。
親権者の変更が認められた場合には、家庭裁判所からもらう調停調書(審判書)と入籍届を市区町村役場に提出し戸籍上の変更を行います。

一方、親権と似た用語で監護権というものがあります。
監護権とは親権のうちの1つで、子供を養育・監護する権利です。
監護者とは、簡単に言えば、子供を引き取り、生活を共にし、身の回りの世話をする人のことです。夫婦双方が親権を譲らない場合などに、親権者と監護者に分けて、それぞれが部分的に子供の責任を負うということもありますが、現在では、親権者と監護者を分けることは少ないです。

親権のQ&A

「親権」って具体的にはなんですか?
「親権」とは、未成年の子のために養育監護・財産管理・法律行為の代理をするといった「権利」と「義務」のことです。
このうち、「養育監護」というのは少し耳慣れない言葉かもしれませんが、具体的には、子の居所を決め、叱るなどの懲戒行為をしたり、子の就職時に許可を与えるといった内容が挙げられます。
婚姻中においては、子の親である夫婦はいずれも親権者となります(共同親権)。しかし、離婚をする場合には、子の親権者を父または母のいずれか一方に定めなければなりません。
離婚前の状態においては、上記のとおり共同親権が認められますので、「親権」ではなく、「監護権」すなわち同居して子の面倒を見るといった権利義務のみが問題となります。
親権者の指定はどのような基準で判断しているのでしょうか?
離婚後の親権者については、まずは当事者である父母で話し合って決めるということになりますが、そのような話し合いができない場合は、家庭裁判所の調停や訴訟で決することになります。
家庭裁判所での手続において親権者の指定をする場合、具体的には以下のような要素を考慮していると考えられます。
①監護実績の尊重
「これまで子どもが父母どちらの監護の下、成長して来たか」という現状維持・現状の尊重という考慮要素です。
②子の意思の尊重
子どもが15歳以上の場合、家庭裁判所は必ず子ども本人の意見を聴くということになっています。また、15歳未満でも、小学校高学年程度の子どもであればその聴き取り内容を尊重し、監護権・親権の判断において参考要素としているようです。
③母性優先
実際に子のケアをし、育児をしているという父親も増えてきた現代社会においては、その重要性は後退してきているとは考えられます。ただ、絶対的な要素ではないものの、「子どもが小さい場合には母性を優先させる」という裁判所の傾向はいまだに見受けられます。
④面会交流の許容性
「同居親となった場合に、別居親に対して面会交流を寛容に認めるか」という点も考慮すべきとしているケースが見られます。別居親に対して寛容に認めるというほど、親権者としての適格性にプラスとなると言われています。もっとも、これは「面会交流をすることが子の福祉に資する(子にとって良いことになる)」ということが前提ですので、面会交流ができない事情があるケースでは、重視すべき要素ではないといえるでしょう。
⑤きょうだいの不分離
子どもが複数名いる場合、そのきょうだいはなるべく一緒にいられるようにしよう、という考慮要素です。
⑥子が現在の同居親と同居するに至った経緯
これは、たとえば子どもを連れ去ってしまって同居するに至ったケースなどで、「その監護状況が違法性を帯びる」ということでその同居親を親権者とするか否かの判断にマイナス要素として働く、ということです。
⑦監護能力
子どもの面倒を見ることができるか、あるいは自身では見られないとして頼るべき親族などがいるのか、など子の住む場所や生活環境を整えられるか、という要素です。なお、「経済力」をこの監護能力の内容に含めるか、という点については、相手方の方が経済的に優れているとしても養育費を適正に支払ってもらえばいいだけのことですので、あまり重視すべきではないといえます。
離婚の際に、親権者と監護権者とを分け、それぞれ別に指定しても良いのでしょうか?
親権者と監護権者を別に指定する、ということも、理論上は可能です。つまり、たとえば親権者は父だが、実際に同居して子を育てる監護権者は母、とすることもできます。しかし、Q1.のとおり、親権というのは法律行為の代理権など幅広い権限があるものですから、逆に言えば子の面倒を見ている監護権者が子どものために何か行為をする場合(たとえば預金口座を開設したり、医療手術を受けるなど)、親権者に判断を求めなければなりません。
したがって、子どものためには、このような親権者と監護権者の分離は望ましくないといえるでしょう。
親権者を決めたら、後で変更することはできないのでしょうか?
離婚の際には、父母の協議で親権者を決定することができましたが、その決定の後に親権者を変更する場合には、家庭裁判所の調停・審判による必要があります。
家庭裁判所が親権者を変更するという判断ができるのは、「子の利益のために必要があると認めるとき」に限られていますので、子どもが虐待を受けているなど、現在の親権者の下での養育が、子の福祉にとってマイナスになっている、というケースになります。
手続面のみならず判断基準の内容からも、一度決めた親権者の変更は、決して容易に認められるものではありませんから、離婚の際には十分に検討して親権者を決めておく必要があります。

以下のような場合は、弁護士にご相談ください。
○自分が親権者になりたいが、相手も譲らない
○親権について話し合っているが、話がこう着状態で、ただ時間が過ぎていく
○調停や裁判で、自分が親権者として相応しいことを適切に主張したい
○離婚時には親権を放棄したが、子供が悪い状況に置かれているので、親権者を変更したい。

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