親権を譲る代わりに宿泊付の面会交流と低めの養育費で離婚を成立させたケース
■紛争の内容
夫(30代会社員) 妻(30代パート) 子2人(6歳、4歳)
夫婦は金銭感覚の違いから口論が絶えず、1年前に妻が子2人を連れて出て行く形で別居生活が始まりました。
別居生活中も、夫は毎月の生活費を妻に仕送りし、今度どうするのか話し合いを続けてきましたが、突然、妻から離婚調停を申し立てられ、裁判所からの呼出状が届きました。
ご相談に来られた夫の依頼を受け、調停離婚に対応することになりました。

■交渉・調停・訴訟などの経過
夫婦ともに離婚することに争いはなかったものの、夫は子ども2人の親権者になることを強く望んでいました。
しかし、妻側には親権者不適格と主張できる要素は何もなく、子どもの年齢からいっても母親が親権者に指定される可能性が極めて高い事案でした。
もちろん、妻も親権を主張しています。
それまでの父子関係も良好であったため、子ども達からも「パパがまたママと一緒に暮らせばいい」などの発言があり、離婚すること自体が子ども達のマイナスになるのではないかと悩み、なかなか結論を出せない事態となりました。
親権以外の争点はなかったにもかかわらず、調停期日は5回を数えました。

■本事例の結末
ベテランの調停委員からの「子ども達の発言を受けてもう一度やり直すとしても、そこでまたお父さん、お母さんがいがみ合っている姿を見せることが、果たして成長期にある子ども達にとって良い結果となるでしょうか。もう二人が夫婦としてやり直せないのであれば、早く離婚という形で決着をつけて、今後は面会交流という形であるべき父子の交流を図っていった方がよほど子ども達の心情の安定になるのではないか」という説得が夫の心に響きました。
最終的には、夫が妻に親権を譲る形で調停が成立しました。
ただし、夫の気持ちやそれまでの父子関係の良好さを考慮してもらい、面会交流は宿泊付のものとし、養育費に関しても算定表基準より低い金額とすることで了解してもらうことができました。

■本事例に学ぶこと
本件では、妻の理解があって、夫が親権を譲る代わりに面会交流の条件を手厚くしてもらい、また月々の養育費も算定表基準より低い金額のみでよいという結論となりましたが、これらは本来、対価関係にあるものではありません。類似の事例で同じ結論になるとは限らないことに注意が必要です。