一度決めた養育費は変えられる?増額の請求をするためには

養育費を一度定めても、決めた時には予想もしなかった事態が発生し、養育費額を変えて欲しいと思うこともあるでしょう。養育費を増額して欲しいという場合、どのような方法で、どのような要件を満たせば変更ができるのか、今回は一度取り決めた養育費を増額して欲しいという場合の流れや注意点を説明したいと思います。

一度決めた養育費を増額してもらうには?

養育費の増額請求

具体的な増額請求手続

 まず、養育費を変えて欲しいという場合、増額であっても減額であっても、当事者で話し合うという方法があるでしょう。一度決めた養育費が「絶対不変」ということはありませんから、決めた事後に重大な事情変更があれば、養育費の額を変更することも可能です。

まずは協議を試み、協議に相手が応じてくれない、あるいは協議しても合意ができなかった、という場合は、まずは調停を申し立てることが考えられます。

調停で変更について合意をすれば、変更後の養育費を支払ってくれない、という場合も、支払義務者の財産を差し押さえるなど、執行力を有する債務名義を得るということも可能になります。

さらに、調停でも話がまとまらない場合は、裁判官が事実について認定をし、「審判」という判断を出して養育費額の変更をすべきか、変更するとすれば新たな金額をどうするか、を決めます。

養育費を変更すべきとき

養育費を変更すべきとき

一度当事者双方で決めている、あるいは裁判官の審判により養育費が決まった以上、どのような場合でも請求さえすれば養育費を増額できる、というわけではありません。

たとえば、一度決めた養育費の内容が不適切だったことが明らかになり訂正の必要がある場合や、一度決めたものの事情の変更がある場合 が、変更すべきとき、となります。

ただ、事情変更といっても、ささいな変更で養育費の増額ができるわけではありません。事案にもよるでしょうが、たとえば収入が10%程度増減した程度では、養育費の額を変えるべきといえるほどの事情変更とはいえないと思われます。

まずは協議!

まずは協議!

養育費の金額を変更には、まずは父母での協議をすることです。最初に増額すべき理由を相手方に説明し、増額の同意を得ましょう。既に合意した内容で調停調書を作成しているなど、執行力がある(差押などができる)場合、強制執行ができるのは、その記載内容の範囲に限られています。協議をして、金額の変更ができなければ強制執行は従前の額までしかできませんし、合意ができて変更の定めをしても変更後の金額について不払となった際には一定の額までしか差押ができません(令和8年4月に施行となった改正法により、債務名義がなくても、養育費の取決めの際に父母間で作成した文書に基づいて、差押えの手続を申し立てることができるようになりましたが、そのような差押の上限額は、子一人当たり月額8万円です。)。それ以上の養育費を定めることになった場合は、新たな債務名義(公正証書など)を得る必要があります。

養育費增額調停

養育費增額調停

協議による合意が難しい場合、債務名義が必要であるが公正証書の作成は応じてもらえないというような場合、既存の債務名義を新たな調停調書により変更したい。

養育費増額調停について

養育費増額調停について

申立人

養育費の増額を求める父または母

管轄裁判所

増額を求める相手方の住所地の家庭裁判所又は当事者間の合意で定める家庭裁判所

申立てに必要な書類

① 申立書 3通(裁判所用、相手方用、申立人控え)
② 事情説明書1通
③ 進行に関する照会回答書 1通
④ 連絡先(送達場所) 等の届出書 1通
※以上①~④は裁判所のホームページにひな形もあります。
⑤ 子の戸籍全部事項証明書1通 (3か月以内発行のもの)
⑥ 申立人の収入資料(源泉徴収票や確定申告書 等)

申立てに必要な費用

① 子一人につき収入印紙1,200円分
② 連絡用の切手
※裁判所によって額が異なります。

養育費増額審判について

養育費増額審判について

調停が不成立となった場合、手続は自動的に審判へ移行します。また、およそ調停はできないという場合は、最初から調停ではなく審判を申し立てるケースもあります。ただし、審判を申し立てても、裁判所の判断により調停に付されることもあります。

養育費の増額の可否についての判断

審判では、当事者の主張や収入資料等から既に決まっている養育費の額を変更することが相当といえる「事情変更」が存在するのかどうかを、裁判官が審理し、判断します(審判)。

審判の内容に不服があれば、不服がある方は家庭裁判所の上級裁判所である高等裁判所に対し、不服申立て(即時抗告)を申立てることができます。ただし、この即時抗告は審判の告知を受けた日から2週間という制限がありますので注意が必要です。

もしいずれの当事者からも即時抗告の申立てがなされない場合には、即時抗告の期限経過後、審判は確定します。

事情変更が「ある」と認められる要件

養育費を増額して欲しい、という場合、合意又は審判で養育費が決まった後に、「事情変更」があったといえることが必要です。

この事情変更の判断要素としては、
①合意又は審判の基礎となった事情に変更が生じたこと、
②合意又は審判の時には、事情の変更を当事者が予見できなかったこと、
③合意又は審判で定めた養育費の支払を維持することが相当でないと認められる程度に重要な事情の変更であること、
といった要素が必要です。

当事者にとって当然予見し得た事情も、「合意した前提」には含まれ、予見し得た事情が実際に生じた場合には、原則として事情の変更があったとみることはできないとされています。要するに、事情変更とは、合意又は審判の時に、当事者が予見できなかったものであることが必要なのです。

さらに、事情変更の程度についても、元の協議、調停、審判により定められた扶養関係をそのまま維持することが「相当でない」と認められる程度に重要であることが必要です。

ただ、以上のような要素があるとして事情変更があるとしても、当事者の帰責性や公平性等を考慮し、増額が認められないという場合もあり得ます。

一般的には、離婚時に養育費を定めたが、その後養育費の権利者が働けなくなり収入が激減したという場合や、義務者の収入が大幅に増額したという場合、あるいは子の疾病その他の事情により費用が高額に必要になったという場合は、養育費を増額すべき事情変更があったといい易いと思われます。

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この記事を書いた弁護士:弁護士 相川 一ゑ

離婚・不倫慰謝料

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所所属、埼玉弁護士会所属の弁護士。
平成21年登録後、男性側・女性側問わず多数の離婚事件に対応。DVや保護命令に関する対応も行っており、地方自治体等公的機関での講演実績も有する。埼玉弁護士会内でも両性の平等委員会で委員長・副委員長を歴任してきた。