熟年離婚について考えている方へ

小野塚弁護士

「熟年離婚」という言葉に、明確な定義があるわけではありませんが、概ね「結婚生活が20年以上に渡っていること」「年齢が40代後半以上であること」「子どもは大きくなって親の手を離れていること」の3つを満たしているものが、それにあたるとされています。
20年以上連れ添った夫婦が離婚する件数は、いまや年間4万件を超えており、全離婚件数の20%を占めています。これは、実に驚くべき数値で、この10年で2倍以上になっているのです。当然、当事務所にも、いわゆる熟年離婚の相談に来られる方が多数おられます。
子どもも成人し、数年後に夫が定年退職を迎える。過去の結婚生活や子どもの成長を振り返りながら、第2の人生を思い描いて、あなたがこれから20年、30年先までも夫との老後生活を望んでいるのであれば、この先を読む必要はありません。
しかし、夫と共に生活することを希望しない、もしくは、その自信がないのであれば、この先を読んで、今後のあなたの人生について、考え、一度弁護士にご相談されることをおすすめいたします。

熟年離婚の原因

時田弁護士

熟年離婚の場合、女性の側から離婚を切り出されるケースが圧倒的に多いのですが、困るのは「夫の側ではまったく心当たりがない」というケースです。或いは、「まったく心当たりがない」というまでではなくても、「今まで、普通に暮らしてきたのに、突然、どうして?」というケースが結構あります。このようなケースでは、夫は普通に暮らしてきているつもりでも、妻の方はさんざん我慢に我慢を重ねていて、遂に耐えられなくなった、というのがほとんどです。

女性にとっての熟年離婚のポイント

女性が熟年離婚を考える場合、最大のポイントは、離婚後の生活の特に経済的な側面です。一定の資産がある場合や、自立できる職業を持っている場合、子供の支援が受けられる場合は、心配ないかもしれません。しかし、そうでない場合は、離婚後のお金の事をきちんと考えておかなければなりません。なるべく多くの離婚給付を受けられるかどうかが離婚後の生活を左右します。年金分割についてきちんと把握しておくことや、適正な財産分与を受けるための財産保全をするなどが重要ですが、これらについては弁護士に相談される事をお勧めします。

男性にとっての熟年離婚のポイント

男性の場合、妻から離婚を切り出されて、なんとかならないか?という相談が多いのです。もちろん、一旦は離婚の話を持ち出されたものの、決定的な理由がないため、何度か調停をやっているのに、離婚はしていないという夫婦もおられます。裁判離婚の項にも書きましたが、裁判で離婚するには、それなりの要件が必要です。従って、弁護士から見ると、法律的に見るとまだ粘れます、という事案もあるにはあります。しかし、本当にそれで良いのでしょうか?当事務所では、ご相談者様の今後の幸せな生活を一緒に考え、最適な道を模索していただくお手伝いをできればと考えています。その際、ある程度築いた財産があることも多いので、効率的に分与することを考えていくべきであると思います。

離婚するまでの生活保障~婚姻費用~

村本弁護士



婚姻費用とは、夫婦の一方がもう一方に対して支払うべき生活費のことです。離婚が成立するときまでの間、請求できます。


いつから婚姻費用の支払義務が生じる?

婚姻費用の支払義務が生じる時期は、配偶者の一人が生活費の支払いを必要としたとき(通常は別居時)です。
実務上は、婚姻費用の支払いを求める調停又は審判の申立時から、支払義務が生じるとされることが多いようです。
婚姻費用分担の調停を申し立てる前に別居が始まっていたという場合、調停の申立てまでに発生した婚姻費用が、財産分与の際に支払ってもらえることもあるようです。そのため、相手が婚姻費用を払ってくれず、やむをえずに借り入れをしたようなケースでは、財産分与の際に婚姻費用の支払いを主張した方が良いかもしれません。

婚姻費用の金額はどのように決める?

(1)年収と算定表
婚姻費用の金額ですが、支払いを求めることができる配偶者と支払義務を負う配偶者の年収の金額に照らし、全国の裁判所が広く採用している算定表に従って、計算をして決定します。

(2)自営業者の所得控除  
自営業者の場合、確定申告の際に、実際には支出をしていない費用が控除されていることが多いのですが、婚姻費用を定める際には、そのような費用を年収から控除すべきではないとされています。

(3)給与所得と事業所得がある場合 
支払義務を負う配偶者に、給与所得と事業所得(簡単に言えば自営業者としての収入)がある場合、どのように計算すべきかという問題がありますが、この問題に対しては、給与所得と事業所得のいずれかを、もう一方に置き換えて計算する方法で対処します。
例えば、給与所得が1200万円であれば、算定表によると、これを事業所得に置き換えた場合の金額は853万円になります(平成30年1月現在)。そのため、給与所得1200万・事業所得400万円の配偶者の年収は、事業所得に換算すると、853万+400万=1253万円になります。

(4)無職者の場合
支払義務を負う者が無職者の場合、原則として収入は「0」として扱います。
しかし、働こうと思えば働けるにもかかわらず、働こうとしない場合には、潜在的稼働能力(働こうと思えば働ける能力)があるものとして、その収入を推計して婚姻費用の金額を決定します。
このような推計をする際、支払義務者の年齢、それまでの就労歴、健康状態等を判断材料とします。
また、このような推計をする際に、厚生労働省が毎年実施している統計をまとめた、「賃金センサス」と呼ばれる、性別・年齢別の平均賃金をまとめた資料を用いることがあります。この賃金センサスを適用するにあたっては、支払義務者がすぐに定職に就くことができる可能性があるか否かで、適用の仕方が変わります。すぐに定職に就くことができない場合は、賃金センサスの短期労働者の性別・年齢別の年間収入によって収入を推計します。

(5)年金生活者の場合
支払義務を負う配偶者が年金生活者であっても、年金を収入として、算定表に従って婚姻費用の金額を計算することが多いようです。

(6)住宅ローンについて
婚姻費用の支払いを求める配偶者が、婚姻した後に同居していた期間において購入した建物に住み続け、建物を出て別居した配偶者がその建物の住宅ローンを払い続けているというような場合は、建物を出た配偶者の支払うべき婚姻費用が減額される可能性があります。

離婚後の生活保障1~財産分与~

財産分与って何?

平栗弁護士

離婚後の生活を支えるための1つに,「財産分与」があります。
財産分与は,婚姻期間中に夫婦の協力により得た財産を,離婚の際に清算することをいい,夫婦のどちら名義の財産かを問いません。
大切なのは,夫婦の協力により得た財産であるかどうかですので,例えば,夫名義で購入し,数十年をかけて夫の給料からローンを完済した不動産であっても,夫が何不自由なく働くことができたのは家事・育児を担ってきた妻のおかげであると考えられ,財産分与の対象となります。
専業主婦の方も,原則として財産の2分の1を分与してもらう権利があるのです。

財産分与の対象となる財産は?

対象となる財産は多岐にわたります。
 ◆不動産
 ◆動産(自動車や宝石)
 ◆預貯金
 ◆株式
 ◆保険の解約返戻金
 ◆退職金 など

退職金

この中でも退職金は,まだ定年退職前であり会社から支払われていなくても,退職金制度のある会社で一定の勤務期間がある場合など支給の蓋然性が高い場合には,将来の退職金が分与対象財産となります
定年退職金は1000万~2000万円程度の方が多く,夫婦関係を清算する上では欠かせません。

なお,将来の退職金については不確実性があるため,裁判例等を中心に以下のような解決方法が示されています。

1 退職金をもらう時ではなく,離婚の時に分与を認める考え方
(1)将来の退職金見込額を基準とする方法(東京地判平成11年9月3日など)
(2)離婚時に退職したと仮定して算定した額を基準とする方法

2 離婚の時ではなく,将来の退職金支給時に分与を認める考え方
(1)将来の退職金見込額を基準とする方法(東京高判平成10年3月18日など)
(2)離婚時に退職したと仮定して算定した額を基準とする方法(東京高決平成10年3月13日など)

住宅

また,ご相談をお受けする中で,「自宅はどのように分けるのですか。」というご質問を頂きます。住宅は,そのまま分割する(2つに分ける)わけにはいきませんので,一方が住宅に住み続ける変わりに住宅の評価額の2分の1を代償金として支払うという方法や,一旦売却し,お金に変えて2分の1ずつ分ける,という方法があります。
お子さんがいれば,お子さんを育てる方が住み続けることも多いですが,お子さんが成人して自宅を出た後であれば売却するという方法も現実的となります。

私たちグリーンリーフ法律事務所の離婚専門チームでは,ご夫婦にとってどのような方法で財産を分けるのが適切かを一緒にじっくりと考え,離婚後の新しい人生を見据えて,解決策をご提示いたします。

離婚後の生活保障2~慰謝料~

離婚による慰謝料の性質

吉田弁護士

離婚による慰謝料は、
① 離婚原因たる相手方の個別的違法行為(暴力や不貞等)による権利侵害から生じた精神的苦痛に対する損害賠償請求権
② 相手方の有責な行為により離婚を余儀なくされ、配偶者たる地位を喪失することによって生じた精神的苦痛(将来の生活不安等)に対する損害賠償請求権
の2つに区別することができますが、実務上その区別は厳密ではなく、双方の精神的苦痛が総合的に考慮されることとなります。

離婚による慰謝料の算定要素

離婚による慰謝料の算定にあたっては、主として以下の要素が考慮されています。
① 配偶者の有責性
→ 婚姻を破綻させた原因、破綻に至る事情、婚姻生活の実態、有責行為の態様、非嫡出子(不貞相手との子)の出生や認知、相手方との責任の割合等が事案に応じて考慮されています。
② 婚姻期間
→ 婚姻期間の長短が離婚原因の如何にかかわらず相当程度考慮されています。
③ 配偶者の資力
→ 離婚による慰謝料を精神的苦痛に対する損害賠償請求と考える場合、配偶者の資力は精神的苦痛の大小に直接関係するものではないということになりますが、個々の事案において、配偶者の資力は、年齢、職業、収入、学歴・経歴、親権の帰属等を含めた当事者の生活状況として考慮されています。
④ 未成熟の子の有無
→ 子の人数や年齢、発育状況等が離婚原因の如何にかかわらず相当程度考慮されています。

離婚原因別の離婚による慰謝料

以下の各ケースからは、一般に、婚姻期間が長い=慰謝料が高額ということがいえるかと思います。
相場を超える慰謝料が認められているケースもありますが、その場合、離婚原因が複数存在する、もしくは、離婚原因となる行為の程度が甚だしいという事情が影響しています。
  
(1) 不貞
 裁判例に基づく慰謝料額の相場 100万円~300万円
 婚姻期間の長短のほか、不貞行為の頻度・期間、不貞相手との間に子がいるか等の事情が考慮されています。

【ケース①】
慰謝料として200万円を認容
ア 婚姻期間17年
イ 子2人あり(いずれも未成年)
ウ 相手方は複数人と不貞関係にあった
エ 相手方には日常的な暴言があった

【ケース②】
慰謝料として300万円を認容
ア 婚姻期間25年
イ 子2人あり(いずれも成年)
ウ 相手方は複数人と不貞関係にあった
エ 相手方に不貞の事実を問い質したところ、暴力をふるわれた

【ケース③】
慰謝料として300万円を認容
ア 婚姻期間34年
イ 子3人あり(いずれも成人)
ウ 相手方は不貞相手と再婚
エ 離婚を切り出したところ、相手方は自宅のドアを壊す等の暴行を行った

(2) 暴力
 裁判例に基づく慰謝料額の相場 50万円~300万円
 婚姻期間の長短のほか、暴行の頻度・程度・期間、怪我・後遺障害の有無等の事情が考慮されています。

【ケース①】
慰謝料として50万円を認容
ア 婚姻期間26年
イ 子2人あり(いずれも成人)
ウ 相手方から結婚当初に暴力を振るわれた
エ 相手方に対して食事を提供しない、洗濯を断る等の対応をした

【ケース②】
慰謝料として300万円を認容
ア 婚姻期間18年
イ 子2人あり(いずれも未成年)
ウ 口論の際に相手方から投げつけられた本が目にあたり後遺障害が残った

【ケース③】
慰謝料として500万円を認容
ア 婚姻期間21年
イ 結婚当初より相手方から継続的に身体的及び精神的暴力を振るわれていた
ウ 相手方の暴行により精神疾患を発症し、現在も回復していない

(3) 悪意の遺棄
 裁判例に基づく慰謝料額の相場 100万円~300万円
 例は多くないのですが、婚姻期間の長短のほか、別居の有無・経緯、生活費の支払い状況・不払いの期間、連絡の有無等の事情が考慮されています。

【ケース①】
慰謝料として300万円を認容
ア 婚姻期間40年
イ 子1人あり(未成年)
ウ 相手方には収入がなく援助を受けて結婚生活を送っていたが、子が生まれた直後に家を出て離婚まで34年間戻らなかった
エ 相手方は養育費の支払いを遅らせる等した

【ケース②】
慰謝料として500万円を認容
ア 婚姻期間10年
イ 結婚後数年で相手方が単身渡航した上、一方的に離婚を宣言し生活費を渡さなくなった
ウ 相手方には不貞相手との間に子1人あり

(4) その他(性格の不一致、モラハラ等)
 判例に基づく慰謝料額の相場 0万円~150万円
 婚姻期間の長短のほか、相手方の言動の内容、言動を受けた経緯・頻度・期間等の事情が考慮されています。

【ケース①】
慰謝料として100万円を認容
ア 婚姻期間24年
イ 子2人あり(うち1人は未成年)
ウ 相手方には、結婚当初から思いやりに欠けた態度、金銭的なルーズさ、威圧的態度があった

【ケース②】
慰謝料として30万円を認容
ア 婚姻期間25年
イ 子2人あり(いずれも成人)
ウ 相手方に相談のない多額の借金の存在が発覚し、交際期間中の中絶について心ない発言をされた

【ケース③】
慰謝料として200万円を認容
ア 婚姻期間33年
イ 子2人あり(いずれも成人)
ウ 結婚当初から相手方は、家族は戸主に従うべきとの考えのもと家族に対して高圧的に接してきた

離婚後の生活保障3~年金分割~

離婚に伴う年金分割とは

相川弁護士

離婚に伴い、婚姻期間等の保険料納付記録を按分割合に応じて夫と妻との間で分割できるのが、「離婚時年金分割」という制度です。
婚姻生活が長い夫婦の離婚件数は、増加傾向にあるといわれていますが、「婚姻生活が長い」ということで結論が大きく変わってくる可能性があるものの一つに、この年金分割が挙げられます。
例えば夫婦の一方である夫が会社員として厚生年金を支払い、妻が主婦であったという場合、そのままでは夫のみが厚生年金の受給者になり、妻には年金のうちの「老齢基礎年金」しか支給されないという事態が生じます。
離婚後に元夫・元妻との年金受給額に格差が生じることは、婚姻中に夫を主婦として支えてきた妻にとっては不公平といえます。
そこで、厚生年金を算出する基礎となる「保険料納付記録(これまで支払ってきた厚生年金保険料の算定委の基礎となった「標準報酬」のこと)」を離婚時に夫婦間で分割する制度(離婚時年金分割)が導入されました。
分割されるのは、「保険料納付記録」であって、「支給される年金そのもの」ではありませんので注意してください。
また、対象となるのは厚生年金及び共済年金であって、自営業者の方のように国民年金しかない方については分割対象になりません。

年金分割の手続について

年金分割のために必要なのは、以下の手続です。

①夫婦間での年金分割の合意及び按分割合の取り決め
  ※夫婦で話し合いが出来ない場合には、家庭裁判所で年金分割について調停申立て等をすることも可能です。
  ↓
②年金事務所・共済組合等に対する年金分割の請求
  ※原則として、離婚時から2年以内に請求しなければならないという点に注意してください。
   ↓
③改定または決定
  按分割合に基づき、厚生/共済年金の標準報酬を改定します。改訂後の標準報酬につき日本年金機構(または共済組合等)から通知が届きます。

その他の注意点など

既に年金を受給していても、年金の合意分割を受けることはできます。
ただし、既に受給した年金については、さかのぼって分割を受けられるわけではないので注意を要します。
また、平成20年4月1日以降の婚姻期間部分については、「3号分割」といって国民年金の第3号被保険者(主婦など)の期間があった方について夫婦間の合意がなくても按分割合を2分の1とする離婚時年金分割手続ができるようになっています。

埼玉県全域に対応しております。

法律相談
0120-25-4631