
新しい民法が令和8年(2026年)4月1日から施行されます。この新民法では、これまでの民法とは異なり、子の監護者の権利義務や、その範囲について明文化されました。今回は、新しい民法下で明文化された監護権について、その制度概要を、説明したいと思います。
子の監護権、新民法下での制度概要
監護権とは

令和8年(2026年)4月1日施行前の民法の定め
これまでの民法(以下「現行民法」といいます。)では、父母が協議離婚をするとき、子の監護をすべき者について、この利益を最優先し協議して定めること、協議により監護者を定められない場合や協議がそもそもできない場合には、家庭裁判所が子の監護者を決めるものとされていました(現行民法766条)。
しかし、そのような定めがありながら、当該監護者が有する「監護権」が一体どのような権利義務であるのか、その範囲や監護者とされたもの以外の親権者の権利はどうなるのか、といったことが法律上定められておらず、その内容は解釈に委ねられるという曖昧ともいえるものでした。
改正法下での民法の定め
これに対し、令和8年に施行される民法(以下「改正法」といいます。)においては、監護者は「子の監護及び教育」「居所の指定及び変更」「営業の許可・その許可の取消し等」につき、親権者と同様の権利を有することや、これらの事項に関する行為について単独で可能であるということを監護権の内容として明記されました(改正法824条の3の1項)。
さらに、監護者を指定した場合の「当該監護者以外の親権者」について、離婚する前の他方の親(共同親権者)、離婚後に共同親権を選択した場合の他方の親、離婚後に親権と監護権をそれぞれの親に委ねた場合の親権者側についても、改正法では定めています。これらの3つのケースにおける「親権者ではあるが監護者ではない者」は、監護者による監護教育等に関する行為をするにあたって妨げてはならないとされています(改正法824条の3の2項)
つまり、「監護者と監護者以外の親権者との間で監護教育等について意見の対立がある場合、監護者の選択が優先される」ということです。
また、改正法では、監護者の定めやその他の子の監護についての必要事項については離婚後に父母間で定められるとしており、いわゆる「監護の分掌」をすることができるということも明確化されました(改正法766条1項)。
監護者の定め

監護権の内容とは
改正法下の監護者は、単独で監護教育等が可能であり、他方の親権者はその監護者の監護教育を妨げることはできないため、仮に一方の親を監護者と定めると、当該親は子の監護教育等の範囲に含まれる事項については子にとって重要な方針選択・意思決定についてももう一方の親の意思に関係なく単独で行うことができる、ということになりました。
監護者を定めることの意義
父母間で子の監護教育等をめぐって対立が生じたとしても、監護者を指定しておけば、あるいは特定の事項について監護の分掌を定めておけば、その定めに従い当該監護者とされた者の判断で決定ができることになります。
父母間で対立状態にあり子のために共同して監護教育等についての判断をしていくということが困難と認められる場合や、夫婦間あるいは親子間で虐待・DVなどがある場合は、特に子の監護者を定めておき、事前に紛争を回避する手立てをとっておく必要性が高いといえます。
監護権の定め方について

「監護者指定」と「監護の分掌」
これらの概念はいずれも子の監護教育等に関する事項について対象にするものですが、「監護者指定」が監護教育等に関する事項全般について包括的・優先的な権限が認められます。
これに対し、「監護の分掌」というのは、「特定の事項」について「どの事項をどちらの親に委ねるか」という一部的・個別的なものです。
「特定事項にかかる親権行使者の指定」とは
さらに、「特定事項にかかる親権行使者の指定」という概念もあります。これは監護教育等だけではなく、法定代理人として行う子のための行為そのものや、財産管理、身分関係に関する事項も対象として父母いずれに当該事項を委ねるのかという問題になります。対象となる事項については具体的な特定が必要です。
「期間」という形で監護を分掌することも可能
さらに、改正法下では、父母の婚姻中あるいは離婚後でも、監護を「期間」という形で分掌することもできます。
たとえば、「毎週月曜日の朝から金曜日の夕方までは父が監護者となり、それ以外の期間は母が監護者となる」というような定め方も可能ということです。
さらに、「特定事項の分掌」を行い、その分掌をする期間の「終期」を定めるということも可能ですし、父母間の関係性等に変化があり得ることを踏まえると、終期は定めておくことが望ましいといえます。
監護権を定めることと面会交流を定めることの違い

監護者を定めることは、当該監護者が子を「監護」することであり、面会交流という「同居親」が子の監護者となることを前提として「別居親」が子と直接的あるいは間接的に交流するというものとは質が異なります。
「期間による監護の分掌」をするということも上述のとおり可能ではありますが、父母間で交替監護をするというのは子にとっては心身に負担を過度に与えることもあり得ることから、このような負担を十分に考慮し、「面会交流」で足りる場合はその定めをするにとどめるということも必要でしょう。
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