
離婚を決意するに至る理由は、夫婦の数だけ存在します。しかし、いざ法的な手続き(調停や裁判)に進むとなると、個人の感情だけでなく「法的に認められる離婚事由があるか」という視点が極めて重要になります。
本稿では、弁護士の視点から、現代の離婚原因のトレンドと、直面した際に知っておくべき法律知識を詳しく解説します。
1. 司法統計に見る「離婚動機」の変遷

令和6年家庭裁判所の司法統計年報によると、離婚申立ての動機として1位なのは「性格の不一致」です。
その他に数が多いのは、
精神的に虐待する(モラハラ)
生活費を渡さない(経済的DV)
暴力を振るう(DV)
異性関係(不貞)
等です。
かつては「不貞(浮気)」や「暴力」といった明確な有責行為が主たる原因でしたが、現代では「価値観のズレ」や「精神的苦痛」といった、より内面的な理由が上位を占めるようになっています。
2. 法的観点から見た「性格の不一致」

実務上、最も多く扱われる「性格の不一致」ですが、実は法律上(民法770条1項)はこれだけで直ちに離婚が認められるわけではありません。
裁判で離婚が認められるには、民法770条1項5号の「婚姻を継続し難い重大な事由」があることを立証する必要があります。単に「気が合わない」だけではなく、以下のような客観的事実が積み重なっているかどうかがポイントとなります。
長期間の別居: 概ね3~5年程度の別居期間があると、婚姻関係が破綻しているとみなされやすくなります。
対話の拒絶: 夫婦間でのコミュニケーションが完全に途絶え、改善の見込みがない状態。
性的不和: 正当な理由のない性交渉の拒絶(セックスレス)も、状況により破綻の原因と認定されます。
3. 近年急増する「モラルハラスメント」の立証

相談件数が激増しているのが、いわゆる「モラハラ」です。身体的な暴力とは異なり、診断書のような明確な証拠が残りにくいのが特徴です。
弁護士としてアドバイスする際、重要になるのは「目に見えない被害の可視化」です。
録音・録画: 暴言や執拗な非難の記録。
日記・メモ: 誰が、いつ、どのような状況で、何を言ったかの詳細な記録。
LINEやメールの履歴: 相手からの過度な束縛や人格否定の文言。
これらを精査し、単なる「夫婦喧嘩」の域を超えた精神的虐待であることを裁判所に伝えることが、有利な解決への鍵となります。
4. 離婚を求めることや拒むことの決定打となる「異性関係」

「異性関係」は今もなお、離婚の決定打となる原因です。また、法的には「自由な意思に基づく不貞行為」があった場合、有責配偶者(離婚の原因を作った側)からの離婚請求は原則として認められません。
不貞を理由に離婚や慰謝料請求を行う場合、以下の点が争点となります。
肉体関係の証拠: 「仲が良い」だけでは不十分で、不貞関係(肉体関係)を推認させる証拠(写真、動画、宿泊の記録等)が必要です。
婚姻関係の破綻時期: 不貞行為が始まる前に、すでに夫婦関係が破綻していたと認定されると、慰謝料請求が棄却されるリスクがあります。
5. 経済的要因と「婚姻費用」

「生活費を渡さない」という理由は、法律的には「悪意の遺棄(民法770条1項2号)」に該当する可能性がありますが、裁判所に認定されるためには、生活が困窮しているか等のいくつかの事情の積み重ねが必要になります。
他方、離婚成立までの間であっても、収入の多い側は少ない側に対して「婚姻費用(生活費)」を支払う義務があります。相手が支払いを拒んでいる場合は、速やかに「婚姻費用分担請求の調停」を申し立てることが、生活の安定を図るための実務的な優先事項となります。
6. 弁護士が教える「後悔しないための備え」

離婚の原因が何であれ、決断をする前に以下の3点を整理しておくことをお勧めします。
財産分与の把握: 婚姻中に築いた財産(預貯金、不動産、保険、株式など)をリストアップする。
子供の福祉: 親権、養育費、面会交流について、子供の利益を最優先に検討する。
証拠の確保: 暴力や不貞、モラハラなどの事実がある場合は、相手に切り出す前に証拠を固める。
7. 結びに代えて

離婚は、過去を清算する手続きであると同時に、ご自身の「これからの権利と尊厳」を守るための法的手段でもあります。
原因が何であれ、一人で抱え込むと感情的な消耗が激しく、法的に不利な条件で合意してしまう等のリスクもあります。まずは専門家である弁護士に相談し、ご自身のケースが法律上どのように評価されるのかを確認することが、今後の生活への新たな一歩となります。
また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。







