
離婚を決意しながらも相手方の拒絶に悩み、お子様を連れての別居を考えているという場合、出口の見えないトンネルを歩いているような不安の中にいるかもしれません。もっとも、正しい法的知識を持つことは、ご自身とお子様の未来を守るための強力な武器になります。別居を開始する前に知っておくべき重要なポイントをまとめました。
相手が拒んでも「離婚」はできるのか?

日本では、双方が合意すれば「協議離婚」が成立しますが、相手が拒んでいる場合は、調停、さらには訴訟へと進むことになります。
法定離婚事由の壁
相手が離婚に同意しない場合、最終的には裁判所に「離婚すべき理由(法定離婚事由)」を認めてもらう必要があります。
- 不貞行為(浮気)
- 悪意の遺棄(生活費を渡さない、同居を拒むなど)
- 3年以上の生死不明
- 強度の精神病
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
性格の不一致などで相手が拒んでいる場合、即座に裁判で離婚を勝ち取るのは容易ではありません。しかし、「別居期間」が積み重なることで、婚姻関係が破綻しているとみなされ、離婚が認められる可能性が高まります。
お子様を連れての別居における注意点

「子供を連れて勝手に出ていくと、誘拐の罪になるのでは?」という不安を抱える方は多いですが、正当な理由(自らが主たる監護者である、DVやモラハラ、育児環境の確保など)がある場合、監護権の行使として違法とはされないのが一般的です。
もしご自身がお子様を置いて一人で家を出てしまうと、後からお子様を連れ戻すのは法的に非常に困難になります(現状維持の原則)。逆に、お子様を連れて出る際は、「子供の生活環境を安定させるため」という目的を明確にし、別居後すぐに適切なケア(学校や保育園の手続き)を行うことが重要です。
別居後の生活を支える「婚姻費用」

離婚が成立するまでの間、収入の多い側は、少ない側の生活費を分担する義務があります。これを「婚姻費用」と呼びます。
婚姻費用は、請求した時点からしか認められないのが通例です。別居したらすぐに、内容証明郵便又はメール等を送るか、家庭裁判所に「婚姻費用分担請求の調停」を申し立てることが重要です。
また、婚姻費用には、配偶者自身の生活費も含まれるため、離婚後の養育費よりも金額が高くなるのが一般的です。
踏むべき法的ステップ

相手が話し合いに応じない場合、以下の順序で進めることになります。
① 夫婦関係調整調停(離婚調停)
いきなり裁判を起こすことはできず、まずは家庭裁判所での調停が必要です。 埼玉県内には、さいたま家庭裁判所(本庁)のほか、久喜出張所、越谷支部、川越支部、飯能出張所、熊谷支部、秩父支部があります。相手方の住所地を管轄としますので、地域を管轄する裁判所を確認しましょう。
調停では、裁判官1名と調停委員2名(男女1名ずつ)が間に入り、直接顔を合わせずに話し合いを進めます。「相手と会うのが怖い」という場合でも、待合室を別にしたり、時間をずらしたりする配慮がなされます。
② 離婚訴訟
調停でも合意に至らない場合、いよいよ裁判となります。離婚を求めるのに十分な別居期間が経過してから訴えを起こすという方法もありますし、その他の法定離婚事由がある場合は、証拠を準備して訴えを起こすという方法もあります。
証拠の例としては、
- 配偶者の不貞を示す探偵が作成した調査報告書、LINEの履歴
- 配偶者の暴力を示す怪我の写真、診断書
- 暴言の音声録音やLINEの履歴
- 日記(いつ、何を言われたか、子供がどう反応したか)
これらを準備しておくことで、訴訟で離婚を認めてもらえる可能性が出てきます。
別居に向けた準備

別居はゴールではなく、新しい人生のスタートです。しかし、感情だけで動くと、財産分与や生活費の不足で不利な立場に立たされるリスクもあります。
財産分与に備えて、別居前に、通帳のコピー、源泉徴収票、不動産の資料など、相手の財産状況がわかる資料を確保しておいてください。家を出た後では、これらを調べるのは至難の業です。
また、生活費の不足に備えて、引っ越し資金、転居後の当面の生活費を用意しておいてください。婚姻費用を請求するために裁判所に調停を申し立てることは可能ですが、調停は1~2か月に1回程度のペースで開催されますので、申立てをしても即時に生活費を払ってもらうことはできないことが多いです。
なお、別居をする前に相談窓口を活用するという方法もあります。埼玉県男女共同参画推進センター(With You さいたま)は、 DVや困難を抱える女性の相談を受け付けています。
まとめ

相手が「絶対に別れない」と言っているのは、ご自身への執着かもしれませんし、世間体や経済的な不安かもしれません。しかし、ご自身の人生の決定権は、相手ではなくご自身にあります。
お子様を連れての別居は勇気がいる決断ですが、適切な法的準備(婚姻費用の確保、親権の主張の整理)を行えば、決して無謀な賭けではありません。
また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。







