子どもとの面会交流ができない中での養育費の支払い

調停で子どもとの面会交流が認められたにもかかわらず、元配偶者が子どもとの面会を拒否する、というケースがときどき見受けられます。自分自身は、養育費を毎月支払続けているのに、子どもと会えないのはおかしい、養育費の支払いを止めたい、と相談される方がいらっしゃいます。このような場合に、面会交流の実現ができていないことを理由として、養育費の支払いを拒むことができるのでしょうか

結論としては、養育費の支払いを拒むことはできません。養育費の支払義務と、面会交流とは、性質を異にするものであるため、片方が履行されないからといって、他方を履行しなくても良いという関係には立たないからです。

そうであれば、離婚に伴って作成する合意書に、面会交流の実現と養育費の支払を交換条件とする条項を定めれば良いではないか、と考えられる方もいらっしゃいます。しかし、「当事者が離婚時に作成した私的な合意書面の中には、養育費を支払わなければ面会交流をさせない旨の条項が記載されていることがある。しかし、そのような条項は、上記の通り、養育費及び面会交流の趣旨・意義に照らせば無効ということになる。」(秋武憲一監修『子の親権・監護の実務』179頁(青林書院))と考えるのが実務です。

また、事実上、養育費を支払わないという強硬手段に出てしまうと、元配偶者は子どもとの面会させない態度をますます頑強にすることが容易に想像されます。

したがって、面会交流の実現の問題は、別問題として、面会交流の調停・審判・履行勧告など他の手段での対応をする必要があります

もっとも、子どもを連れた元配偶者の立場からすれば、反対のことが当てはまります。面会交流を認めなければ、親権を持たない他方の元配偶者が養育費を支払うモチベーションが下がるのは、やむを得ないことです。

面会交流にしても、養育費にしても、いずれも子どもの福祉のための制度です。夫婦間の関係は離婚により無くなったとしても、親子関係はずっと続きます。
大人の事情による駆け引きに拘泥せず、子どものためには何をするべきなのか、離婚当事者はお互い考える必要があります。