
不倫を理由に離婚する際、請求できる慰謝料には「不貞慰謝料」と「離婚慰謝料」があります。両者の違いや二重取りの可否、相場、増額要因など、実務的な観点から詳しく解説します。
はじめに

配偶者の不倫(不貞行為)が発覚したとき、心に受ける傷は計り知れません。裏切られたショック、崩れた家庭への絶望、そして将来への不安。そうした苦しみの中で、「せめて正当な慰謝料を受け取り、再出発の糧にしたい」と願うのは当然のことです。
しかし、いざ慰謝料を請求しようとすると、「不貞慰謝料」や「離婚慰謝料」といった言葉が出てきて、自分はどちらを、いくら請求できるのか、混乱される方も少なくありません。また、相手方が不倫を認めなかったり、不当に低い金額を提示してきたりすることも多々あります。
本稿では、離婚問題を数多く取り扱う弁護士の視点から、不倫に伴う慰謝料の仕組みを徹底的に解説します。適正な賠償を受け、納得のいく形で人生の次の一歩を踏み出すための参考にしてください。
「不貞慰謝料」と「離婚慰謝料」の本質的な違い

法律上、慰謝料とは「不法行為によって受けた精神的苦痛に対する賠償金」を指します。不倫が絡む離婚では、主に以下の2つの名目が登場します。
不貞慰謝料(浮気そのものに対する慰謝料)
不貞慰謝料とは、配偶者が第三者と自由な意思で肉体関係を持ったことによって、「婚姻共同生活の平和」を破壊されたことに対する慰謝料です。
この慰謝料の最大の特徴は、不倫をした配偶者だけでなく、その「不倫相手」に対しても請求できる点にあります。
離婚慰謝料(離婚することに対する慰謝料)
離婚慰謝料とは、相手方の有責行為(不倫、DV、モラハラなど)によって、最終的に「離婚せざるを得なくなったこと」そのものによる精神的苦痛への賠償金です。長年築き上げた家庭を失う喪失感や、離婚後の生活への不安などが対象となります。
両者の関係と「二重取り」の可否
よくある質問に「不貞慰謝料と離婚慰謝料の両方を別々にもらえるのか?」というものがあります。
結論から申し上げますと、実務上、これらは包括的に「不倫を原因として離婚に至ったことへの慰謝料」として一本化して判断されることが一般的です。
例えば、不貞慰謝料として200万円、離婚慰謝料として200万円の計400万円といった単純な足し算にはなりません。しかし、「不倫の結果、婚姻関係が破綻して離婚に至った」という事実は、精神的苦痛を増大させる強力な要因となるため、離婚しない場合よりも慰謝料額は高額に設定されます。
慰謝料の相場:いくら請求できるのか?

慰謝料には交通事故のような明確な算定表はありません。裁判所は、個別の事情を総合的に考慮して金額を決定します。実務上の目安は以下の通りです。
状況別の相場
離婚はせず、別居もしない場合
50万円 ~ 100万円
不倫が原因で別居または離婚に至った場合
100万円 ~ 200万円
「1000万円請求したい」というお気持ちも理解できますが、日本の裁判実務で300万円を超えるケースは、不倫の態様が極めて悪質であるか、婚姻期間が非常に長いなどの特殊な事情がある場合に限られます。
金額を左右する具体的な要素(増額・減額要因)
裁判所が重視するのは、主に以下のポイントです。
婚姻期間の長さ
婚姻期間が長いほど(例:20年以上)、平穏を壊された苦痛が大きいとみなされ、増額されます。
不貞期間と頻度
数年に及ぶ交際や、同棲していた事実は大きな増額要因です。
不倫相手の態度
妊娠させた、発覚後も関係を続けた、被害者を嘲笑したといった事情は悪質とみなされます。
子供の有無
幼い子供がいる場合、家庭崩壊の影響が大きいと判断されやすいです。
夫婦関係の現状
不倫前から夫婦仲が冷え切っていた(破綻していた)とみなされると、慰謝料が大幅に減額、あるいは認められない場合もあります。
誰に請求するか?「配偶者」と「不倫相手」の責任

不倫は、配偶者と不倫相手が共同で行う不法行為(共同不法行為)です。そのため、被害者はどちらに対しても全額を請求できます。
連帯債務の考え方
例えば、妥当な慰謝料総額が200万円の場合、配偶者に200万円請求してもいいですし、不倫相手に200万円請求しても構いません。
ただし、配偶者から200万円を全額受け取った場合、すでに損害は補填されたとみなされ、不倫相手に重ねて請求することはできなくなります。
注意すべき「求償権(きゅうしょうけん)」
不倫相手にだけ慰謝料を請求する場合、注意が必要なのが「求償権」です。
不倫相手が慰謝料を支払った後、その相手が不倫配偶者に対して「半分はあなたの責任なのだから、払った分の半分を返して」と請求するのが求償権です。
離婚せずに家計が同じままであれば、不倫相手から取ったお金が、結果的に配偶者の財布から出ていくことになり、家計全体ではあまり得をしないケースもあります。これを防ぐには、示談書に「求償権を放棄する」という条項を盛り込む交渉が必要になります。
慰謝料獲得のために不可欠な「証拠」の力

裁判でも交渉でも、最も強力な武器になるのは「客観的な証拠」です。相手が「肉体関係はなかった」「ただの友達だ」と逃げられないようにするため、以下の証拠を準備しましょう。
有効とされる証拠の例
ラブホテルへの出入りの写真・動画:滞在時間まで記録された探偵の調査報告書は極めて強力です。
メール・LINEのやり取り
「昨日の夜は最高だった」「愛してる」といった肉体関係を推認させる内容。スクリーンショットではなく、端末を直接写真撮影する方が証拠能力は高まります。
クレジットカードの利用履歴や領収書
ホテルの利用、旅行の支払い、プレゼントの購入履歴。
GPSの記録やドライブレコーダーの映像
相手の家やホテルに長時間滞在している記録。
本人の自白・録音
不倫を認めた際の録音や、自認書(念書)。
※注意
無理にスマホを盗み見たり、相手の家に侵入したりするなどの行為は、プライバシー侵害や住居侵入として逆に訴えられるリスクがあります。証拠集めの手法についても、事前に弁護士に相談することをお勧めします。
慰謝料請求の手続きと流れ

一般的に、以下のようなステップで進みます。
証拠の確保
相手に気づかれる前に、十分な証拠を集めます。
交渉(示談)
弁護士が代理人となり、内容証明郵便を送付するなどして相手と交渉します。多くの場合、ここで合意に至ります。
調停
離婚とセットで請求する場合、家庭裁判所での調停で話し合います。
訴訟(裁判)
交渉でまとまらない場合、裁判所が判決を下します。
多くの依頼者様が「裁判まではしたくない」と希望されますが、弁護士が背後にいることで「裁判になれば負ける」と相手が判断し、交渉段階で有利な条件を引き出せるケースが非常に多いのが実情です。
時効の壁に注意

慰謝料請求には期限があります。
不貞慰謝料
不倫の事実と不倫相手を知ったときから3年。
離婚慰謝料
離婚したときから3年。
「いつか請求しよう」と思っているうちに、時効によって権利が消滅してしまうことがあります。特に過去の不倫を理由に離婚したい場合は、早急に期限を確認する必要があります。
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来35年以上の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。 また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。







