
「夫のスマートフォンに、見慣れないアイコンのアプリがある。」、「家計の記録にはないはずのお金の動きが、銀行口座の振込履歴(ビットフライヤー、コインチェックなど)にポツポツと現れている……。」
もしあなたが今、離婚を考えているなら、それは「新しい時代の隠し財産」のサインかもしれません。
かつて「へそくり」といえばタンス預金や内緒の銀行口座でしたが、現代ではその形が「暗号資産(仮想通貨)」へと姿を変えています。
本コラムは、弁護士の立場から、離婚時の財産分与において、夫が隠し持っている暗号資産をどのように見つけ出し、正当な権利(半分)を確保するか、その方策について徹底解説します。
なぜ「暗号資産」が離婚時の争点になるのか

財産分与の原則は、「婚姻期間中に夫婦の協力によって築き上げた財産を、原則として2分の1ずつ分ける」というものです。
ここには現金、預貯金、不動産、株、そして当然ながら「暗号資産」も含まれます。
しかし、暗号資産には以下の特徴があるため、意図的に隠されやすいという問題があります。
- 物理的な実体がない: 通帳のような紙の証拠が残りにくい。
- 匿名性が高い: 口座名義が本人であっても、銀行のように簡単には照会できない場合がある。
- 価値の変動が激しい: 以前は数十万円だったものが、数千万円に化けている可能性がある。
「夫は投資なんてしないはず」と思い込むのは危険です。
スマホ一つで簡単に始められる今、数百万円、数千万円単位の資産がデジタルの海に隠されているケースは決して珍しくありません。
スマホと生活から見つける「5つのサイン」

まず、ご自身で確認できる「証拠の種」がいくつかあります。
感情的になって問い詰める前に、まずは以下のポイントをチェックすることをおすすめします。
1 銀行口座の振込履歴
暗号資産を買うためには、まず日本の銀行口座から取引所にお金を振り込む必要があります。
そこで、過去数年分の通帳やネットバンキングの履歴を確認し、「特定の取引所名」宛の振込がないか探してください。
たとえ最近の動きがなくても、過去に大きな金額が振り込まれていれば、それが今や何倍にも膨らんでいる可能性があります。
2 確定申告書(雑所得の記載)
夫が会社員であっても、暗号資産で年間20万円以上の利益が出た場合は確定申告が必要です。
確定申告書の控えをチェックし、「雑所得」の欄に金額が入っていないか、あるいは「送り状」に暗号資産に関連するキーワードがないか確認しましょう。
3 SNSやブラウザの履歴
「ビットコイン」、「アルトコイン」、「NFT」といった用語を検索した形跡や、X(旧Twitter)で投資家のアカウントをフォローしている場合も、重要な手がかりになります。
隠された資産を探る方法

相手が「そんなものはない」「昔はやっていたがもうゼロだ」としらを切る場合、法的な手続きが必要になります。
弁護士であれば以下の方法をとることが可能です。
1 弁護士会照会(23条照会)
弁護士は、取引所に対して「この名義人の口座にどれだけの資産があるか」を照会することができます。
国内の主要な取引所であれば、この照会に応じて残高や取引履歴を開示してくれる場合があります。
ただし、これには「どの取引所を使っているか」という特定が必要です。いくら弁護士といえども闇雲に照会手続を行うことはできませんのでご注意ください。
だからこそ、事前の「アプリのチェック」や「振込履歴の確認」が重要になります。
2 文書提出命令・調査嘱託
協議や調停が進んでいる場合、裁判所を通じて「取引履歴を出しなさい」と命令を出してもらったり、裁判所から取引所へ問い合わせを行ったりすることができます。
※海外取引所・個人ウォレットの壁
最大の難関は、海外の取引所や「メタマスク」などの個人ウォレットに資産を移されている場合です。
これらは日本の裁判所の手が届きにくいため、完全な特定が困難なこともあります。
財産分与の落とし穴:「いつの時点の価値」で分けるか

暗号資産に関する財産分与で最も揉めるのが、「評価基準日」の問題です。
暗号資産の価格は1日で10%以上変動することも珍しくありません。
通常、財産分与の対象となる財産の範囲は「別居時」を基準に確定させますが、その「価値」をいつの時点で計算するかは事案によります。
一般的には「口頭弁論終結時(裁判の最終段階)」や「調停成立時」の時価で評価することが多いですが、急落のリスクを避けるために、あえて「現物(コインそのもの)で半分に分ける」という合意をすることもあります。
調停や訴訟での攻め方

離婚調停の場で「相手は暗号資産を隠しています」と抽象的に言うだけでは、調停委員・裁判官は動いてくれません。
重要なのは、「外堀を埋める」作業です。
まず、銀行口座の履歴から「取引所への入金」の事実を突きつけることが大事です。
それを踏まえて、「取引があることは分かっている。隠し続けるなら、財産隠しに該当する」と主張し、提出を促す方法がございます。
もし、相手が「大した額ではない」と言い出したら、すかさず「では、その取引履歴(CSVデータ)を提出してください」と主張すべきでしょう。
暗号資産の取引履歴は、取引所から簡単にダウンロードできます。
「出せない」というのは「見せたくない(=高額な利益がある)」と白状しているようなものです。
注意!やってはいけないNG行動

証拠を掴みたい一心で、以下の行動に出ると、離婚条件が不利になったり、最悪の場合、刑事罰を問われたりする恐れがあります。
1 スマホのパスロックを勝手に解除して中身を盗み見る
プライバシー侵害として、慰謝料請求の対象になる、あるいは証拠として認められないリスクがあります(ただし、偶然見えた、あるいは日常的に共有していた場合は別です)。
2 勝手に自分のウォレットに送金する
窃盗罪や不正アクセス禁止法違反に問われる可能性があります。
あくまで「アプリがあった」、「メールが届いていた」という事実を写真に撮る、あるいはメモするに留め、その後の「法的開示」は弁護士に任せるのがスマートな戦略です。
まとめ

「スマホの中のことだから分からない」と諦めてしまうのは、あまりにももったいないことです。
相手が夜な夜なスマホをチェックしているその指先の下には、これからの生活を支えるための、大切な資産が眠っているかもしれません。
「少し怪しいな」と思ったら、まずはその直感を大切にしてください。あなたが手にするべきはずの「半分」をしっかり守るために、私たちは法的な知識を駆使してサポートします。
【チェックリスト】相談前にこれだけは確認!
- 通帳に「コインチェック」「ビットフライヤー」等の文字はないか?
- 確定申告書の「雑所得」欄に数字が入っていないか?
- 相手が最近、デジタル用語(Web3、メタバース等)を口にしていなかったか?
これらの一つでも当てはまるなら、ぜひ一度、当事務所の無料相談へお越しください。複雑な暗号資産の財産分与を、分かりやすく、そしてあなたに有利に進めるためのプランをご提示します。
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来35年以上の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。 また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。







