離婚調停において、申立人の蓄えが多い場合に財産分与を行わなかったケース
■紛争の内容
双方離婚については合意をしているが、当事者間では離婚の条件(当初は主として親権者をいずれにするか)について話し合いを行うことができないので、間に立って交渉を行ってほしいというご依頼でした。

■離婚協議の経過
しばらくの間、メールを用いて相手方と離婚の条件について交渉を行っていたのですが、相手方の返信が区々であり、このまま交渉を行っていても結論に至ることは難しいと思われましたので、離婚調停を申し立てることにしました。
離婚調停では、調停委員の説得もあってか、面会交流を充実させてくれるのであれば、親権を譲ってもよいというところまで漕ぎつけましたが、新たに相手方から離婚に伴う財産分与を行ってほしい旨の希望が出されました。
ご依頼者様の財産が合計1500万円程度存在する半面、相手方の開示してきた財産は250万円程度であったため、そのまま財産分与を行った場合には、ご依頼者様が相手方に支払いを行わなければならないという状況でした。ただ、相手方は高収入であったため、他にも財産があるのではないかと指摘をしたところ、相手方は、互いに財産は分与しないということでよいのではないかという主張に転じました。
ご依頼者様の財産を開示する以前の段階で相手方の主張が変更されたことから、相手方として、ご依頼者様の財産を確認した上で財産分与を行わない方が得策であると考えたために主張を変更したということではないように思いますが、結局のところ、いずれの財産が多いのかという点は明らかとならないまま調停は終了しました。
 

■本事例の結末
結論としては、ご依頼者様を親権者とし、財産分与は互いに行わない旨の離婚調停が成立しました。
今回は、離婚に際して相手方に支払いを行わずに済みましたが、相手方があくまで財産分与を望んだとすれば、調停は不成立となっていたかもしれません。

■本事例に学ぶこと
財産分与に関して、相手方が任意の財産開示に応じないという場合があり得ます。
その場合、こちらが相手方の財産を見つけ出す必要があるのですが、それが成功せずに財産隠しをされてしまう可能性は否定できません。仮に財産隠しをされたとして、それでも相手方の財産が多いという場合はまだよいのですが、こちらが相手方に財産を分与しなければならない状況に陥ることも絶無ではありません。
そのような財産隠しを阻止するため、離婚を考え始めた段階で、相手方の財産がどこに存在するかについて目を光らせておく必要があるのかもしれません。