紛争の内容 
高校生の娘がいるAさんは、夫Bと三人で生活していましたが、Bが女性と不貞をしていることを知りました。Bは、その女性と再婚をしたいと考えたらしく、Aさんに養育費や財産分与などの条件も定めないままに離婚を強く迫り、一方的に家を出てしまいました。Aさんは、離婚はやむを得ないと考えたものの、娘を抱えて経済的な補填もなく、離婚に応じることはできないと考え、弁護士に依頼することにしました。

交渉・調停・訴訟などの経過 
まずAさんが法律相談にいらした時点で、Bは自分の再婚にしか興味がなく、家族で住んでいた家を売却するため、Aさんや娘にも早く家を出て行くよう強く迫っていました。この家はB単独名義の一戸建てで、ローンも完済しており、最寄り駅からも近く、売却も容易な物件でしたから、Aさんが知らぬうちに、売却されてしまう可能性もありました。この不動産は夫婦の共有財産としては唯一の価値あるものでしたから、まず、ご依頼を受けてから弁護士にてこの一戸建てがBに勝手に売られてしまわないよう、離婚の調停を申し立てるとともに審判前の保全処分として、不動産の仮差押命令を申立てました。

本事例の結末 
保全処分ではBが離婚の財産分与をする前に売却してしまう可能性について、それまでのBの言動などを資料化し、裁判所に説明をしました。無事、仮差押命令が認められ、これを受けたBは、離婚調停の第1回目の段階で、早期の事件解決のため、Aさんを娘の親権者とした上で、Aさんの求める養育費・財産分与額を認めました。慰謝料については、不貞の決定的な証拠がなく、Bも事実を否定したため、調停の中では合意ができませんでしたが、Aさんはこの点を諦めることとし、代わりに財産分与としてこの不動産の売却代金を全てAさんがもらえることになりました。

本事例に学ぶこと
 離婚調停などでは、相手方がどのようなことを求めているか、ということを観察することが大事であると感じました。つまり、離婚を一刻も早くしたいという相手方であれば、離婚に早期に応じる代わりに財産分与や慰謝料などで大きな譲歩を求めることが考えられます。ただ、そのような相手方の事情がない場合には、法的にどのような決着がつきそうであるか、先例などを基に、交渉することが結果的には一番早期に解決を図る手段と思われます。