紛争の内容
子らも成人し、熟年離婚を考えている奥様からのご相談でした。
当初は、離婚については悩んでおり、「仮に離婚するならどうなりますか?」というご質問からスタートしました。
そこで、私は、ご夫婦の状況を踏まえて、多数の実務経験から、「このような解決が見込めます。」というお話をしました。
その後、しばらくしてから、再び奥様から法律相談がありました。
「実は、あの後主人とは別居しました。」ということでした。
ご自分で、夫婦関係調整(離婚)調停を申し立て、数回の期日に参加されたようです。
しかし、調停は平行線を辿り、聞いたところ、あらぬ方向で資料を用意しなければならない(数十年分の預貯金通帳を出し合って、家計の支出が正しかったかを検証するという無謀な提案に流されそうになっておりました)状況でしたので、ここは代理人弁護士をきちんと立てて、離婚への道筋を整理してもらいたいということで、経験豊富な弁護士がご依頼を受けました。

交渉・調停・訴訟等の経過
調停では、それまでに弁護士によらずに行われていた話合いをひっくり返すことから始めざるを得ませんでした。
幸いにして、調停委員は、私の主張に理解を示し(私どもは、離婚調停を多く経験している関係上、面識のある調停委員がおり、日頃の活動からも、無理な主張をしていないことは理解して頂けたのだと思います。)、それまでの過去に遡った家計の検証というのは取りやめ、あくまで別居時点の財産分与に焦点を絞りました。

問題は、不動産でした。
ご夫婦には多額のキャッシュは存在せず、目ぼしい財産としては保険の解約返戻金や不動産がありました。
不動産には、夫が成人の子と同居しており、妻は戻る気も不動産を欲することもありませんでしたので、代償金(不動産を一方が得る代わりに、不動産の価値の半分をお金で支払うことです)を受け取って解決することにしました。

最初は夫側が理解を示さずに話合いが難航しましたが、途中から弁護士を選任し、弁護士同士、実務の経験が分かり合っておりましたので、こちらの主張が通り、話し合いによる解決に至ることができました。

本事例の結末
1000万円の財産分与を受け取る内容(もちろん、その他にも年金分割等の条件も設定します)で、調停離婚することができました。
1000万円はキャッシュがなかったため、数回の分割払い(その間に保険や定期預金の解約等で工面するほか、収入を蓄えて支払う)による解決となりました。しかし、支払われないリスクを考え、不動産に対し、第一順位の抵当権設定登記をすることにし、ワンストップで司法書士とも連携のうえ、登記に支障のない文言を整え、数回の調停により解決することができました。

本事例に学ぶこと
一つは、家庭裁判所の調停とはいえ、当事者の主張により、あらぬ方向で話合いが進んでしまうことがある点です。
つまり、調停委員は、離婚事件の対応に慣れているとはいえ、きちんとご自分の主張に沿って議論をリードしないと、よからぬ結果に繋がりかねないということです。
弁護士に依頼しないということは、確かに弁護士費用の節約にはなりますが、しかし安心は得られず、中には「これも受け取ることができたのに」「どうしてこのような内容で和解してしまったの」ということも少なくありません。言葉を選ばずにいえば、”安物買いの銭失い”のような結果を招かないとは限りません。

もう一つは、離婚については様々な解決策があり得るということです。
よくあるのは、確かに財産はあるが不動産等の金銭に換価し難いものであり、どうやって代償金を支払うのか?という悩みに直面することがあります。
このような場合にも、決して不利にならないよう、防衛をしておくことが重要です。つまり、分割払いにしたら、分割を怠ったらどうすればよいか?など、相手が誠実に対応しなかったときの担保をしっかりと考えておく必要があるということです。

これらの二つの悩みは、弊所の弁護士にご相談・ご依頼いただくことで解決することがあります。
離婚事件の処理はプロにお任せください。

弁護士 時田剛志