紛争の内容
主婦Aさんは、会社員である夫Bとの間に3人の子をもうけましたが、その子らが物心がついたころから既に夫との折り合いが悪く、ずっと離婚をしたいと思いつつ、子のために離婚をしないでおりました。

夫Bも、Aさんとの関係を良く思っていなかったため、子らがいずれも成人し独立してから、Aさんと住んでいた一戸建ての自宅を出て、都内のマンションに住むようになりました。

Aさんは、夫Bとの離婚は応じる意向であったものの、夫婦唯一の財産と言える一戸建ての自宅を何とか自分のものにしたいと考え、Bとの離婚協議を自分でしていたものの、Bはまだ当該一戸建ての住宅ローンが残っていることを理由に、Aさんに財産分与することを拒み、Aさんは弁護士に相談し、何とか離婚ができないかと考えたのです。

交渉・調停・訴訟等の経過
B自身も離婚に応じる気はあったため、問題は住宅ローンを完済し、安全にAさんに名義変更するか、という点でした。

Aさんは、親族がなくなったことによる生命保険金をたまたま得ており、その保険金は特有財産としてBとの財産分与の対象となることはなかったため、この保険金から残ローンを一括弁済することとし、Aさんに自宅を譲渡してもらうことになりました。

本事例の結末
BとAさんとの間では不信感もあり、この合意は公正証書できちんと作成することとし、不動産の抵当権抹消や、名義変更も正式に司法書士に依頼し、滞りなくAさんの希望がかなって離婚の届もすることができました。

本事例に学ぶこと
熟年夫婦の場合、財産分与の対象となる財産が複数あることがある一方で、その財産がどこまであるか、どのように清算するかということが問題になることもあります。

財産分与の考え方も色々な説があるため、お困りの際には是非法律家の知恵を参考にしていただくべきだと感じました。

弁護士 相川 一ゑ