紛争の内容
夫が、事前に予告することなく自宅を離れて別居し、弁護士に依頼をして、妻(以下、依頼者の方といいます。)に対して、自宅の所有権を移転するので、離婚して欲しいという連絡をしました。

納得のいかない依頼者の方が、弊所に相談し、離婚事件について交渉を依頼しました。

交渉・調停・訴訟等の経過
初めは交渉をしていたのですが、合意を得られる見込みがありませんでしたので、調停の申立てを行いました。

調停では、主に学費の負担と財産分与について話し合いをしました。

財産分与については、子供のために貯蓄した積立金が、夫婦の財産分与の対象となるのか、それとも依頼者の方と今後も暮らす子供固有の財産となるのかが争いになりましたが、双方ともにお互いの主張の根拠を書面で示した後、積立金の半額程度を財産分与の対象とすることで合意しました。

また、年金分割を50%の割合で行うことで合意しました。

本事例の結末
夫が学費の約50%を支払い、財産分与として自宅の所有権を妻に移転し、その他に約860万円を支払い、年金分割を50%の割合で行うという内容で和解が成立しました。

本事例に学ぶこと
大学進学の決まった子供がいる場合は、大学進学に同意していた夫は、離婚後において、収入に応じて学費を負担する義務が生じることがあります。

本件ではこのような義務が認められる可能性がありましたので、夫が学費を負担するという内容で和解が成立しました。

また、子供のために貯蓄した積立金は通常は夫婦の財産分与の対象となるのですが、夫の保有する財産が高額であり、積み立てが子供が成人する頃まで続けられていたというような場合は、子供固有の財産として扱う趣旨で夫婦が貯蓄をしていたと認定される可能性もあります。

そして、今回の案件でも、こうした事情がありましたので、子供のための積立金の半額程度は子供固有の財産とすることで和解ができました。

弁護士 村本 拓哉