事案の内容
結婚10年目の女性Aさんは、地方公務員の夫Bとの間に男児Cをもうけましたが、婚姻当初からのBからの暴言・暴力に悩まされていました。

Bは、Aさんの両親を罵ったり、Cが勉強に集中できないとAさんのことを罵り、AさんやCの目の前で物を壊したり、何時間もAさんやCに説教をするなどの言動を繰り返していました。
あるとき、耐えきれなくなったAさんは、両親に自分がBからどのような言動を受けているかを相談すると、驚いた両親は直ちにBと別居するよう勧めました。

Aさんは、県外に親戚がいたため、その親戚の元でCと生活することを決意し、Bに秘密で避難をしました。

AさんとCが自宅におらず、帰ってこない様子に慌てたBは、警察に相談するなどしましたが、Aさんはあらかじめ警察にも相談していたため、捜索願などは対応されずに、別居を開始することになりました。BはAさんの両親や知人、友人など片っ端から電話連絡し、Aさんの居所を言うよう脅すなどして警察沙汰にもなりました。

結局Bが刑事処分を受けることはありませんでしたが、このような態度にAさんは離婚の決意を固くし、弁護士を立ててBに対し離婚を求めることにしました。

事案の経過(交渉・調停・訴訟など)
弁護士から通知を受けたBは、当初AさんやCに謝罪の意を表しましたが、Aさんが離婚する意思が固いと見るや態度を翻し、Aさんの悪口を言うようになりましたので、これ以上の協議はできないということになり、離婚調停を申立、それでも調停が成立しなかったため離婚訴訟を提起することになりました。

本事例の結末
離婚訴訟の中でも、Bは離婚を争い、別居の原因はあくまでもAさんがだらしない妻であるからだなどと主張しましたが、裁判所はBの主張を容れず、離婚原因はBの暴言や暴力にあること、Cの親権はAさんに認められること、養育費も算定表のとおり20歳まで払うこと、慰謝料として100万円を払うことなどを判決で示しました。Bはその判決のとおり養育費を任意で払うようになり、無事Aさんは離婚などを勝ち取ることができたのでした。

本事例に学ぶこと
暴力・暴言・モラハラをする配偶者が、協議離婚で自分の非を認めることはほとんどありません。ご自身で交渉が難しいということであれば、早めに代理人を立て、調停等の第三者を入れた話し合い、それでもだめなら裁判官の判断を仰ぐ訴訟にするのが良いと感じました。

弁護士 相川一ゑ