事案の内容
 Aさんは、結婚3年目の夫との間に女児Cをもうけましたが、子どもが生まれたころから夫の乱暴な態度が徐々にひどくなり、遂には子どもの前でもAさんに物を投げつけるなどの暴力が振るわれるようになりました。近所の人の通報により警察が臨場し、Aさんには警察から「夫と離れて暮らした方が良い」とアドバイスされたことから、娘Cを連れて埼玉県内の実家に避難をしました。当初Aさんは自分の親を通じてBと離婚の話をすることを検討していましたが、Bは一切話し合いに応じようとしなかったため、Aさんは弁護士に依頼することにしました。

事案の経過(交渉・調停・訴訟など)
 Aさんの代理人として就任した当職からBに連絡をし、離婚及び離婚成立までの婚姻費用の支払いを求めたところ、Bは「離婚はしたくない。別居中の生活費はAが勝手に出て行った以上支払う気はない。」としてそれ以上の対応をしてくれなかったため、やむなく直ちに離婚及び婚姻費用の支払いを求めて調停をすることになりました。調停は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所で行うため、県外にいるBの住所地を基準として、Aさんの避難先住所とは離れたところになってしまいましたが、遠隔地でありかつDV案件であるということ、Aさんに弁護士が就いているということを踏まえ、第1回目の調停期日から電話会議による方法で実施をしてもらえました。

本事例の結末
 第1回目の調停期日の段階では、既に当職からBに対し離婚と離婚成立までの婚姻費用の支払いを求めた通知から3か月が経過していましたが、家庭裁判所では調停委員を通じてBに対しAさんの離婚の意思は固いこと、そして婚姻費用は原則的に支払われるべきものであることが伝えられ、Bは直ちに離婚の成立と、これまで未払となっていた婚姻費用を支払うこと、わずか3年の婚姻生活ではありましたが財産分与
として50万円をAさんに支払うこと、Cの養育費として算定表基準での額を20歳まで支払うことを約束しました。
離婚については、本人の意思確認を要するため、原則的には電話会議での調停成立はできないとされていますが、本件では調停に代わる審判の形で上記合意内容を決定することとなり、無事1回の調停期日で離婚も婚姻費用も終結しました。

本事例に学ぶこと
 協議離婚を渋った当事者でも、調停の申立により今後の見通しを踏まえ離婚に応じることもあるので、交渉が進まない場合には早期に離婚調停に踏み切ることも望ましいケースがあると感じました。

弁護士 相川一ゑ