紛争の内容
離婚自体に争いはないと思われるが当事者間で離婚協議を行うことは難しいとのご相談でした。

離婚条件の交渉についても一筋縄ではいかないと思われる状況でしたので、離婚調停の申立てを前提に代理人として受任しました。

交渉・調停・訴訟などの経過
離婚調停を申し立てることと並行して財産分与の前提となる財産関係資料の開示を相手方に求めました。

しばらくした後に財産関係資料の開示がなされましたが、自宅に関しては双方が取得した査定価値に開きがありました。夫婦ともに自宅は売却しても構わないとのことでしたので、仲介業者を入れて売却の方向で進めることとしました。

自宅の立地からいずれの査定書もそれなりの高値をつけていましたが、実際に売り出してみるとなかなか買い手がつかないという状況が続きました。

調停において相手方は自宅の売却を待たずに離婚に応じてほしいとの意見を述べていましたが、こちらは自宅の売却が済んだ後に離婚成立としたい旨主張しました。

自宅の買い手が現れない状態で数回調停期日が開催されましたが、売出価格を再設定したところようやく買い手が現れました。

本事例の結末
自宅の売却を含めた形で離婚条件を調整し離婚調停が成立しました。

本事例に学ぶこと
婚姻後に自宅を購入した場合、基本的には自宅も財産分与の対象となります。

自宅の評価は現在の査定価値から財産分与基準時点の住宅ローン残額を控除するという形で行いますが、自宅を売却しない場合、手元に現金として存在しない価値を分与しなければならないということになり、支払原資の問題が生じることが多くなっています。

自宅を売却する場合、売却金額から住宅ローン及び売却諸費用を控除した残額が自宅の評価であり、手元に現金が残る場合には支払原資の問題は生じないということになりますが、自宅がどのタイミングで、また、どの程度の価格で売却できるかは売り出してみないと分からないという別の問題が生じることになります。

今回は何とか離婚調停の枠内で自宅の売却まで進めることができましたが、自宅の処理は必ずしも容易ではないということは認識しておくとよいと思います。

弁護士 吉田 竜二