紛争の内容 
妻Aさんは、3年前に夫Bと結婚し、その後すぐにBとの間に女の子を一人もうけました。ところが、交際時には気づかなかったBの粗暴な言動に、将来の不安を抱くようになり、子を連れて実家に避難することにしました。Bの粗暴な言動は、確かにAさんにとっては大変つらいものでしたが、調停や裁判でBから否定された場合、その言動の証明や悪質性を理解してもらうことは難しいと思われました。AさんはBと二人で、県内に一戸建てをペアローンを組んで購入していましたが、その一戸建てもBの単独名義としてよいので、何とかBとの離婚をしたいと考えるようになりました。BにAさんから自身の両親を通じて離婚を呼び掛けても、Bは自分の粗暴な言動を否定し、全く取りあってもらえませんでした。そこで、Aさんは調停をする覚悟もしつつ、まずは協議離婚ができないか弁護士に依頼することにしました。

交渉・調停・訴訟などの経過
 Aさんに当職という弁護士が就いてからも、Bは離婚を拒否し続けましたが、Aさん及び長女の分として婚姻費用を請求する旨、そして調停も辞さない旨を伝えたところ、Bは自身でも弁護士に相談をしたようで、結果として協議離婚に応じるとの回答をしました。また、AさんとBの共有名義の一戸建てについては、不動産屋の査定をとったところ、残ローンよりも高額の査定額となったことから、Bは自身にAさんの共有持分を移転してもらい、Aさんのローン分も引き受けるとして、ローンの借り換えと名義変更をすることができました。

本事例の結末
 以上のとおりで、AさんはBに協議離婚に応じてもらうことができ、長女の親権も無事自分とすることができました。養育費についても、合意をすることができ、調停も考えていた案件でしたが、合意書を公正証書にすることもできたため、調停離婚とはなりませんでした。

本事例に学ぶこと
 相手方配偶者が離婚に応じない場合、究極的には調停を経て、訴訟をしなければならないこともあります。しかし、訴訟になれば法定の離婚事由が必要であり、現時点では直ちにその離婚事由について主張・立証ができないという場合には、相手方が何故離婚に応じないのか、よく確認の上、調停移行や婚姻費用の支払についてのデメリットを踏まえ、結局離婚に応じてもらえるということもあります。そこで、明確な離婚事由がなさそうな事案であっても、あちらが譲れない点・こちらが譲れない点を踏まえ、交渉することが重要であると感じました。                       
弁護士 相川 一ゑ