紛争の内容
相談者は、妻が実家に子らを連れて帰省してしまい、子らと会えないという悩みを抱えて弊所に訪れました。
離婚自体は認めるものの、子らとの面会交流の条件をきちんと取り決めたいというのがご意向でした。
面会交流は、交渉、調停、審判という手続があります。
審判は最終的に裁判官に決めてもらう手続です。これは、父母間で合意に至らなかった場合の最後の手段ですが、なかなか男性側には厳しい内容になってしまうのが現在の実務です。もちろん、この実務を変えたいという強い気持ちはありますが、そう簡単ではありませんので、交渉という柔軟な解決ができる段階で取り決めるということにメリットがあることは事実です。
早速、ご依頼を受け、交渉をスタートしました。

交渉・調停・訴訟などの経過
交渉を進めると、妻側の代理人弁護士との間で、冷静なやりとりを行いました。
養育費の額、終期、財産分与など、他の条件面の折合いをつけながら、面会交流が上手く実施できるように知恵を絞り、多少細かい部分まで合意する方針で進めました。
その間、面会交流を試行することもありました。

本事例の結末
夫側の子に対する愛情が妻側にも伝わったのか、審判では到底求められない条件を合意することができました。
具体的には、以下のような条件で合意することができました。

・毎月1回、午後1時から午後5時までの受渡型の面会交流を実施することを認め、その具体的な日時については、協議の上、決定すること
・年間1回程度(子らが望む場合には、年2回程度)、子らの長期休暇(夏季・冬季)において、宿泊を伴う面会交流を実施することを認め、その具体的な日時については、協議の上、決定すること
・これらの面会交流とは別に、月に1回以上(前記1乃至2項の面会交流を行わない月は、月2回以上)、1回当たり20分以内の電話による交流を認め、その具体的な日時については、協議の上、決定すること
・母親は、父子交流の重要性を尊重し、できる限り父子交流が実現するように努めなければならないこと
・対面による受渡型面会交流を実施しない場合には、電話もしくはウェブ会議の方法による代替手段を用いて、面会交流を実施することを認めること
・子らの病気等により本条に定めた面会交流ができないときは、子らの福祉に配慮して、協議の上、代替日を設定すること
・互いに、相手方の評価を貶めるような言動をしないことを確約すること
・子らの発達成長に伴い、面会交流の諸条件を調整する必要が生じた場合には、相手方に対し、余裕をもって協議を申し入れ、相手方は真摯に協議に応じることを約束すること
・子らが各々10歳に至った場合、父と子らが直接連絡を取り合い、日時を取り決め面会交流することを認める。ただし、事前に面会交流の日時は事前に知らせること

本事例に学ぶこと
こと面会交流に関しては、監護者(親権者)の理解と協力が不可欠です。
とくに子が小さいうちは尚更です。
裁判実務では、小さいうちは子の心情の安定を重視し、月一回程度しか会うことを認めてくれなかったり、母親の状態が不安定になると子育てに悪影響するということで間接的面会交流しか認めてくれなかったりと、きわめて非監護親に手厳しい審判を下すことがあります。
そのような中、上述しましたとおり、監護者の理解と協力が不可欠ということを念頭に、粘り強く面会交流の実績を重ね、お子さんとの心理的距離を近づけることが最も大切と考えます。そのためには、夫婦が熾烈に争うのではなく、お子さんのためには冷静に、父と母として、最善の利益を考え、その実現に向けて協力し合うことが欠かせません。
面会交流でお悩みの方は、一度、離婚専門チームまでお気軽にご相談ください。

弁護士時田剛志