紛争の内容 
 3年前に結婚したAさんは、夫Bの「俺がいなければ何もできないくせに。」「俺の言うことを黙って聞け。」などといったモラハラ発言と殴り掛かるようなそぶりを繰り返すという暴力に悩んでいました。Aさんは、友人や姉などにも相談し、Bから逃げたほうがよいと考えるようになり、遂に警察に相談をすることにしました。警察から注意を受けたにもかかわらず、Bは自分の言動は何も問題がないと言い張りました。
Aさんは警察からも「別居したほうが良い」とアドバイスされたこともあり、Bが仕事をしているうちに自分の荷物を持って夫婦で買った共有のマンションを出ることにしました。
Bは警察からの注意も気にしないような人物であったことから、Aさんはとても自分一人ではBとは離婚の合意はできないと考えるに至り、協議離婚の段階で弁護士に依頼することにしました。

交渉・調停・訴訟などの経過
 上記のとおり、AさんはBとの別居後、協議離婚を進めるべく弁護士に依頼をしましたが、弁護士からの協議離婚の提案にも、Bは一切応じず、やむなく離婚調停を申し立てることにしました。Bは離婚調停の呼び出しにも応じず、結局調停は不調で終了となりました。Aさんは、Bと離婚したいという決意も固く、直ちに離婚訴訟を提起することにしました。

本事例の結末
Bは、離婚訴訟の期日には出頭したものの、警察に答えた通り全く自分の非を認めようとしませんでした。また、共有のマンションについては、自分の方が多くお金を支払って購入したから、自分のものだと言い張り、一切妥協しなかった上、逆に勝手に家を出たAさんに慰謝料を請求してくるほどでした。結果として、和解も不可能であったため、裁判所の判決を求めたところ、Aさんの離婚も、共有マンションのAさんの持分に応じた代償金500万円の支払も、慰謝料100万円の支払も、全て認めてもらいました。婚姻期間は短かったものの、警察に相談した後のBの対応や尋問での様子なども考慮し、裁判所はAさんの訴えるBのモラハラやDVを認定しました。この判決はBからの控訴もなく確定し、BはAさんの代理人弁護士からの指示に応じて判決に定めるとおりの支払もしてくれました。

本事例に学ぶこと
モラハラやDVについては証拠がなかなか集まらないこともあり、認定が難しいこともあります。しかし、Aさんは警察への相談や病院にも通院していた様子など資料を基に主張し続け、慰謝料の支払いも認めてもらえました。相手方の反論にもよりますが、証明が難しい類型の事件においても、きちんと主張していくことが重要と感じました。

弁護士 相川一ゑ