紛争の内容
Aさんは、長年連れ添った夫から突然家庭裁判所に離婚調停を申し立てられました。
Aご自身も、これまでの婚姻生活におけるすれ違いから離婚に向けた意思は持っていました。
しかし、これまでの感情的なしこりから話が全くかみ合わず、また、夫側が提示する離婚条件も不明確であったため、手続きが前に進まない状態でした。
ご自身で調停を進めることに大きな不安と限界を感じたご相談者様は、適正な条件での離婚を成立させるため、当事務所に代理人をご依頼されました。
交渉・調停・訴訟等の経過
特に熟年離婚において争点になりやすいのが「財産分与」です。
婚姻期間が長いため、預貯金、退職金、保険の解約返戻金、不動産など対象となる財産が多岐にわたります。 弁護士は、まず財産分与の対象を確定するための「基準時(原則として別居時)」を明確に設定しました。これにより、別居後に夫が財産を費消したり、隠匿したりするリスクを防ぎました。
その上で、調停の場においては感情的な対立を排し、極めて客観的かつ粛々と手続きを進めました。
養育費について:双方の最新の収入資料(源泉徴収票や確定申告書など)を提出し、裁判所の算定表に基づいた適正な金額を算出・主張しました。
財産分与について:基準時における双方の財産資料(預貯金通帳、保険証券、不動産の査定書など)を漏れなく収集・提出し、具体的な分与案を明示して説得的かつ合理的な交渉を行いました。
本事例の結末
論点を整理して主張を行った結果、当事者同士では全く話がかみ合わなかったにもかかわらず、弁護士が介入してからわずか3回目の調停期日で、ご相談者様が十分納得できる適正な養育費と財産分与の支払いを受ける内容での調停が成立しました。 ご相談者様は、経済的な不安を払拭し、晴れやかな気持ちで新たな人生のスタートを切ることができました。
本事例に学ぶこと
①当事者間の交渉には限界がある
長年の不満が蓄積している熟年離婚では、当事者同士の話し合いは感情的になりやすく、建設的な議論ができないケースが多々あります。弁護士が間に入ることで、相手と直接やり取りする精神的ストレスから解放され、冷静な法的手続きへと移行できます。
②財産分与における「基準時」の設定の重要性
財産分与を適正に行うためには、「いつの時点の財産を分けるのか(基準時)」をしっかり設定し、その時点での財産資料を正確に把握することが不可欠です。これを曖昧にしたまま調停を進めると、本来もらえるはずの財産を取りはぐれる危険性があります。
③客観的資料の提出が「早期解決」の鍵
本件が、弁護士介入後わずか3回という短期間で成立したのは、弁護士が初期段階で必要な「収入資料」や「財産資料」を迅速かつ正確に裁判所へ提出し、かつ夫側に財産資料の追加提出を迅速に要求したからであると考えられます。調停委員も事案の全容を把握しやすくなり、相手方への説得もスムーズに進みました。
弁護士 安田 伸一朗







