
協議や調停において養育費の金額についても合意したうえで離婚する方も多いかと思います。その数年後、突然相手方から養育費の減額をしてほしいといった連絡があるかもしれません。あるいは、いきなり裁判所から相手方より養育費減額の調停が申し立てられたので出廷してくださいといった内容の書面が届くこともあります。
どのような条件があると養育費の減額が認められるのかについて知識を有していないと、相手方より養育費の減額の請求をされたときに適切に対応することが非常に困難になってしまいます。
そこで本コラムでは、養育費について解説したうえで、養育費の減額請求が認められる条件等について解説します。
養育費とは

養育費とは、子どもの監護や教育のために必要な費用のことをいいます。一般的には、子どもが経済的・社会的に自立するまでに要する費用を意味し、衣食住に必要な経費、教育費、医療費などがこれに当たります。
離婚後に子の主たる監護を担当する親は、他方の親から養育費を受け取ることができます。離婚によって、子の親権者となくなる場合でもその子の親であることに変わりはありませんので、養育費の支払い義務を負います。
養育費の金額は、夫婦間の話し合いで決定することができます。話し合いで合意ができないような場合には調停を申立て調停委員及び裁判官を破産で話し合いを行い、それでも合意が整わない場合には裁判官が養育費の金額を審判で決定します。
また、養育費の取り決めなしに離婚した場合であっても、民法改正によって、令和8年4月1日より、当事者の養育費の取り決めがなされるまでの暫定的・補充的な養育費として、子一人当たり月に2万円の養育費の請求ができるようになりました(法定養育費制度)。
一度取り決めた養育費の減額は認められる?

夫婦間の合意や、調停・審判によって養育費の金額の取り決めがなされた後で、養育費の金額の減額がされることはあり得るのでしょうか。
養育費の金額は、当事者間で合意すれば自由に決定できるため、一度養育費の金額の取り決めをしていたとしても養育費の減額について当事者間で合意ができるのであれば減額されることがあります。
また、養育費の支払いは通常子が20歳になる又は大学卒業するまでといった長期間支払うことが想定されるもので、その支払い期間中に当事者が予期していなかった事情が生じ、当事者の生活状況が変わってしまうことも考えられます。そのため、養育費の減額について当事者の合意が整わない場合でも、事情の変更が生じているか否か家庭裁判所が個別具体的事情から判断し、養育費の減額がなされる可能性があります。
養育費の減額が認められる条件

養育費の金額の減額は、合意又は審判で養育費が決まった後に、事情の変更が生じた場合に認められます。
事情の変更が生じたといえるかの判断要素として以下のものが挙げられます。
- 合意又は審判の基礎となった事情に変更が生じたこと
- 合意又は審判の時には、事情の変更を当事者が予見できなかったこと
- 合意又は審判で定められた養育費の支払いを維持することが相当でないと認められる程度に重要な事情の変更であること
以下では、事情の変更が認められる可能性の高い具体的な事情をいくつか紹介します。
義務者(養育費を支払う側)の収入が減ったこと
養育費の金額は、夫婦それぞれの年収が基準の一つとなっています。前述のとおり養育費の支払いは長期間に渡りますので、その期間中に義務者(養育費を支払う側)が失業、病気、怪我等でやむを得ず収入が減ってしまった場合には、減額後の収入の金額に応じた養育費の金額となるよう養育費の減額が認められる可能性があります。
権利者(養育費を受け取る側)の収入が大幅に増額したこと
養育費の金額は、夫婦それぞれの年収が基準の一つとなっていますので、権利者(養育費を受け取る側)の年収が、就職した、パートから正社員となった等の事情によって大幅に増額した場合、養育費の減額が認められる可能性があります。
義務者(養育費を支払う側)が再婚して扶養義務者の数が増えたこと
義務者(養育費を支払う側)が再婚して扶養義務者の人数が増えた場合には、養育費の減額が認められる可能性があります。
例えば、義務者(養育費を支払う側)が再婚して、その再婚相手の連れ子と養子縁組をした場合や、その再婚相手との間に新たに子が誕生したような場合です。
権利者(養育費を受け取る側)が再婚し、子が再婚相手と養子縁組した
権利者(養育費を受け取る側)が再婚し、子が再婚相手と養子縁組をしたような場合には、再婚相手が子の第一次的な扶養義務者となり、義務者(養育費を支払う側)が第二次的な扶養義務者となるため、養育費の減額がなされる可能性があります。
養育費の減額が認められないケース

一方で、養育費の減額請求をしても認められないケースもあります。
例えば、養育費算定表(裁判所が公開している、親の収入や子の人数、年齢に基づいて適切な養育費の金額を算出すための基準となる表のことです。裁判官は、養育費に関する金額の合意が整わない場合、最終的にこの表を用いて養育費の金額を算定します。)記載の養育費の相場より高いということのみを理由とする場合に養育費の減額は認められない可能性が高いです。
このような場合には、一度は養育費の金額に合意しており、その後何らかの事情の変更があったわけでもないため、減額が認められない可能性が高いといえます。
養育費の減額の交渉の流れ

相手方が養育費の減額を望んでいる場合、以下の手段によって養育費の減額の交渉をすることが予想されます。
当事者間での話し合い
一度取り決めした養育費の金額の変更をするためのもっとも簡易な方法は当事者間の協議によって、新たな養育費の金額の合意をすることです。また、過去に養育費についての執行認諾文言付公正証書、調停調書、審判書が存在する場合に、新たに裁判所外で養育費の金額の合意をしても、既存の執行認諾文言付公正証書、調停調書、審判書等の執行力を失わせることはできないため、金額の変更を定めた新たな公正証書を作成する必要があります。
調停
当事者間の協議による合意が難しい場合、相手方は養育費減額調停を申し立てることになります。調停では、調停委員2名及び裁判官1名が当事者の間に入り双方から話を聞きながら双方が合意できるよう話し合いが進められます。
調停では、およそ1か月から2か月に1回期日が開かれ、そこで当事者がそれぞれ交互に調停委員と話をします。
審判
調停で合意できなければ、調停は不成立となり審判へ移行します。審判では、当事者双方の主張、及び当事者双方が提出した収入資料及び各証拠から、一度取り決めた養育費の金額を変更することが相当といえる事情の変更が存在するのかどうかを、裁判官が審理し、審判を出します。
審判の結果に不服があれば、当事者双方は、高等裁判所に不服申し立て(即時抗告)することができます。申立期間は、審判の告知を受けた日から2週間で、その期間の内に申立書を原裁判所に提出する必要があります。期間が短いため、徒過しないよう注意が必要です。
養育費の減額の調停を受けた際に弁護士に依頼するメリット

養育費減額調停を申し立てられた時、権利者(養育費の支払いを受ける側)が弁護士に依頼せず自分一人で対応することも可能ですので、必ずしも弁護士をつける必要はありません。
一方で、弁護士に依頼することによって、具体的な事情を聞いたうえで養育費の減額が認められてしまうのか、養育費の減額が認められるとして減額後の養育費の金額はどのくらいになるのかなどの見通しを立てたうえで、弁護士よりどのように対処するべきであるのか等の適切なアドバイスを受けることが可能です。
また、調停に関する手続きや書面の作成を弁護士に任せられるため、大変な手続きから解放されますし、依頼者の意向に沿いながら法的に適切な主張をすることができますので早期に解決できる可能性が高くなります。調停期日にも弁護士が同行するため、調停委員に自分が伝えたいことをうまく伝えられないような場合には調停委員にうまく伝わるよう弁護士がフォローします。
まとめ

・養育費とは、子どもの監護や教育のために必要な費用のことで、主たる監護を行う親が他方の親から支払を受けることができるものである。
・養育費の金額の減額は、合意又は審判で養育費が決まった後に、事情の変更が生じた場合に認められる。
・事情の変更の判断要素は、
①合意又は審判の基礎となった事情に変更が生じたこと
②合意又は審判の時には、事情の変更を当事者が予見できなかったこと
③合意又は審判で定められた養育費の支払いを維持することが相当でないと認められる程度に重要な事情の変更であることなどがある。
・単に養育費算定表記載の養育費の相場より実際の養育費の金額が高いということのみを理由とする場合に養育費の減額は認められない可能性が高い。
・養育費の減額は、調停での話し合いがまとまらなければ、調停は不調となり、審判に移行し、裁判官が当事者の主張や証拠から養育費の減額を認めるか否か判断する。
・養育費減額調停を申し立てられた場合、弁護士に依頼することで、見通しを含めた適切なアドバイスを受けることができ、かつ調停関係の手続きや書面の作成等の大変な手続きから解放される。
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