紛争の内容
ともに30代の夫婦(共働き)。子なし。
夫からのDVがひどく、妻は夫のいない隙に最低限の荷物を持って家を出る。
その後、郵送のやり取りで離婚届に署名・押印をもらって役場に提出した。
このように離婚が成立した後、夫が弁護士に依頼のうえ、妻に対し財産分与の請求をしてきたため、妻からの依頼を受けてその代理人となった。

交渉・調停・訴訟などの経過
夫は、主に、妻が管理していた生活費口座の預金の2分の1と、夫婦が飼っていた血統書付きの犬2頭(購入金額約60万円)を引き渡すよう要求してきた。
妻としては、生活費口座の2分の1を支払うことに異存はなかったものの、犬については妻自身の蓄えで購入したものであったので、引き渡しを拒絶した。
代理人を通じて交渉したがまとまらず、夫側から財産分与の調停が申し立てられた。
また、話し合いの中で、妻が自宅に残してきた荷物(親の形見を含む大切なもの)の返還をお願いしてきたが、夫が犬との交換でないと返さないとの態度を示し続けたため、妻側からは特有財産の返還を求める調停を申し立てた。

本事例の結末
①財産分与
 妻から夫に、生活費口座の預金のうち2分の1の金額を支払うということで調停が成立した。
 ※犬2頭については、夫が強く権利を主張したものの、妻が独身時代に貯めた自分の預金口座から購入していることの証拠(代金支払いに使用したカードの当時の明細書、カード引き落としの金額が印字された通帳)を提出し、妻の特有財産であることが認められた。
②特有財産返還
財産分与の決着と前後して、夫が、期日間での荷物の引き取りを承諾したため、実際に荷物を引き取った後、調停申立を取り下げた。

本事例に学ぶこと
妻によると、夫は、同居期間中、特に犬をかわいがることもなく、散歩や餌やりといった日常の世話も全て妻が行っていたとのことである。
そうであるにもかかわらず、離婚後の財産分与の場面で夫が犬に関してこれほどの執着を見せたのはなぜなのか(自分のもとから逃げ去った妻への意趣返しなのか)・・・疑問が残る事案であった。