?紛争の内容
ご依頼者は,夫と別居を開始した後に当事務所に相談されました。
妻の元には未成年者がおり,育児に追われる毎日でした。
離婚には双方に争いがなかったですが,夫からは婚姻費用の支払がなく,また離婚条件について争いとなっていたため,まずは婚姻費用分担調停を申し立て,当面の生活費を確保する方法を選択しました。

?交渉の経過
ご依頼者は育児に追われていたため,収入は減少しており,前年度の収入を基礎とするのは望ましくないと考えました。そこで,当面は,毎月の収入をもとに年収を推計する形で主張をしました。なお,相手方は,案の定,離婚調停を申し立ててきましたが,こちらは婚姻費用の支払を先行させる考え方をとり,離婚条件についてはその後検討する方向で進めました。

?本事案の結末
1年弱の期間を経て,まずは婚姻費用を定めることができ,未払分をまとめて支払ってもらう内容で調停が成立しました。その金額は,算定表どおりの金額よりも少々高めに設定することができました。未払分の婚姻費用の支払を確認できましたので,その後,すぐに離婚調停も成立し,結果としても,ご依頼者の当初の要望(離婚条件)に近づけることができました。

?本事案に学ぶこと
離婚事件は,なかなか思い通りに進むことは少ないですが,経済的なプレッシャーを検討することも有効です。例えば,婚姻費用と養育費を比べると,婚姻費用の方が高額となります。婚姻費用には,妻(又は夫)の扶養分も含まれるからです。
仮に,婚姻費用は16万円,養育費になると11万円とすると,月5万円の差が生じます。離婚までに1年間かかれば,年間で60万円もの差が生じることにもなります。
したがって,支払義務者にとっては,早く離婚をした方が経済的な負担が少なくて済む,ということになります。そのため,「多少は自分に不利な条件が定められていたとしても,早く離婚したい」という心情を引き出せる場合もあり,結果として,有利に交渉を進められることもあります。