紛争の内容
Aさんは、2年前に公務員の夫Bと結婚し、男児Cを産んでからは主婦になりました。
しかし、Cが生まれてからはBの帰宅が遅くなり、言動も粗暴になるなど、夫婦関係の維持が難しい状態となりました。
AさんはBに態度を改めてるよう求めましたがBは応じず、「文句を言うなら離婚をする」などといって暴れ、Cの前でも粗暴な態度をとるようになりました。
AさんとBは、離婚をすること、親権をAさんとすることには争いがなかったものの、離婚後の面会交流についてBが直接的な面会交流をすることに拘ったため、協議離婚はできず、Aさんは弁護士に依頼することにしました。

交渉・調停・訴訟等の経過
弁護士が就いてからも、Bは面会交流に拘ったため、離婚調停を申し立てることにしました。
その離婚調停の中でも、Bは面会交流を主張しましたが、離婚に至る経緯の中でCの前でもBが粗暴な態度をとっていたことから直接的な面会交流は子の福祉に資さないと主張し、ただCが成長し、自らBと会うことを望むのであればAさんが父子の交流を妨げることはしない、という約束をすることを前提に、間接的な面会交流(年に1度、Cの写真などをBに送付する)をすることでBに納得してもらうことができました。

本事例の結末
調停にて、離婚・親権・養育費・面会交流について、いずれもAさんの求める内容で合意ができました。

本事例に学ぶこと
面会交流は子の福祉のために行うものであるため、「親権者となる者にとって非親権者は信用できない」という事情だけで拒否できるものではありません。
しかし、本当に面会交流をすることが子にとって良くないということが明らかになれば、裁判所も強く面会交流を勧めるということはしない傾向にあります。
離婚した元配偶者であっても、子にとっては親であることは変わりがないため、一般的には面会交流を認めるのが子の福祉に適うと言えますが、それが危ういときには、「子の成長に応じてその意思を尊重し、面会交流をさせる余地を残す」という決め方をしておくことで、非親権者の譲歩を得ることができることもあります。
また、面会交流をしておいた方が、非親権者としても養育費を支払う意欲を失わないということも一般的には言えると思いますので、本当に面会交流を全て拒否すべき場面かというのは慎重に検討する必要があると感じました。

弁護士 相川 一ゑ