紛争の内容 
主婦をしているAさんは、サラリーマンである夫Bから、ある時一方的に離婚を求められてしまいました。Aさん自身はBから日々暴言を受けていましたが、まだ幼い子どももおり、自分には落ち度がないのに離婚を求められるのは承服しかねたからです。そこで夫Bは、Aさんに婚姻費用、つまり婚姻中の生活費を一切支払わず、Aさんが離婚するというまで嫌がらせをする様になりました。困ったAさんが、弁護士に相談し、夫Bとの同居は続いていたものの婚姻費用分担請求調停を申し立てることになりました。

交渉・調停・訴訟などの経過 
当初夫Bは婚姻費用分担請求調停の中でも、離婚を強行に求めてきましたが、Aさんには離婚に応じる意思はなく、むしろ離婚原因を作ったのはBであったため、離婚の話は措き、あくまでも婚姻費用を支払うべきとの説明を、代理人弁護士からも、調停委員からも致しました。結果、Bは納得していない様子でしたが、調停委員会の中の裁判官がBに対し扶養義務を前提とすれば、Bが婚姻費用の支払いを免れることは出来ないことを改めて指摘し、Bは婚姻費用の支払いに応じることとなりました。

本事例の結末 
結果として、婚姻費用をBに支払ってもらうという内容で調停が成立しましたが、裁判所で利用している算定表(標準算定方式)は同居中のAさんとBという関係ではそのまま適用することは出来ません。電気ガス光熱費などのライフラインなどは、Aさんだけではなく、扶養義務者たるBも使用しているからです。そこで、一定程度この点を考慮した金額を家計簿やAさんの生活状況から代理人弁護士にて説明し、それを踏まえて裁判官にBが支払うべき月額婚姻費用を提示してもらいました。

本事例に学ぶこと
同居中の夫婦ですと、なかなか家事調停を申し立てるということがやりにくいとは思いますが、婚姻費用分担義務は同居中の夫婦だからといって否定されるものではありません。夫婦間で任意の話し合いができない場合には、調停によって相手方を話し合いの場に呼び込むことが出来るケースが多いと思いました。

弁護士 相川一ゑ

埼玉県全域に対応しております。

法律相談
0120-25-4631