事案の概要(紛争の内容)
 会社員の夫Bを持つAさんは、里帰り出産から夫との同居を再開後、Bが浮気をしていることに気づき、更に夫が自分に暴力を振るってくることに悩んでいました。Bは浮気を否定していましたが、SNSでは女性と親しくしている様子が載せられており、まだ生まれたばかりの子どもを抱えて離婚することにも躊躇を覚えていたAさんでしたが、いつものように夫婦ゲンカが始まったある日、Bが「子ども置いて出て行け」などと怒鳴り、Aさんが抱いていた幼い息子を無理やり奪おうとしたBの態度に「もう離婚するしかない」と考えたAさんは、弁護士に相談することにしたのです。Aさんは、しばらくは友人宅に避難し、弁護士を通じて協議離婚することも考えましたが、それまでのBとのメールなどのやりとりなどでは、Bが「親権は譲らない」と頑なに主張したため、Aさんはやむを得ず調停から進めることとしました。

交渉・調停・訴訟などの経過
 調停では、夫Bはそもそも離婚をすること自体を争い、自身の浮気なども否定しました。また、仮に離婚をするとしても、財産分与は一切認めないと述べてきました。離婚の調停と合わせて、婚姻費用の分担請求調停も行っていたところ、これについては調停委員を通じBも法律上支払義務を免れないものと諦め、算定表通りの支払をすることとなりました。

本事例の結末
 Aさんからは、Bからの暴力の証拠として写真などを提出し、子どもについては定期的に写真を送ることで直接の面会交流も、親権も夫Bが諦めてくれることになりました。
 結果として、Bは離婚に応じ、養育費も収入に応じて、財産分与もそれまで明らかになっていた夫婦の財産の半分を分与してもらえることとなりました。慰謝料についてはかたくなに応じませんでしたが、婚姻期間が1年弱と非常に短く、暴力があった期間も出産後同居を始めてからのわずか1か月程度であったこと、浮気についても性的関係まで有しているという決定的な証拠がなかったことから、請求しないこととしました。

本事例に学ぶこと
暴力や浮気の証拠がある場合は、調停の段階で調停委員にも見てもらい、「離婚訴訟となれば、離婚を請求されている側にとってより不利な結論になりかねない」と理解してもらうことが重要と感じました。

弁護士 相川一ゑ