紛争の内容
本件は、日本で婚姻した外国人同士(中国籍の方とアメリカ籍の方)の離婚トラブルです。
日本で就労し生活基盤を築いている依頼者様に対し、配偶者であるお相手は母国(あるいは他国)へ帰国してしまい、その後どこで何をしているのか全く分からない「行方不明」の状態に陥ってしまいました。電話やメール等の連絡手段も途絶え、当事者同士での話し合い(協議離婚)は物理的に不可能な状況でした。 依頼者様は日本で新しい人生を歩み出すために離婚を強く望んでおられましたが、「相手がどこにいるか分からないのに、どうやって離婚手続きを進めればいいのか」と途方に暮れ、当事務所にご相談にいらっしゃいました。
交渉・調停・訴訟等の経過
第1段階:徹底した所在調査と証拠収集
裁判を起こすにしても、通常は相手方に訴状を届ける必要があります。弁護士はまず、相手方が本当に「行方不明」であることを裁判所に客観的に証明するため、徹底した調査を開始しました。 出入国在留管理庁(入管)に対して出入国記録の開示請求等を行い、相手方がすでに日本を出国している事実を裏付けました。さらに、過去に判明していたアメリカの住所地宛てに国際郵便等で連絡を試みましたが、やはり功を奏さず、相手方の所在を掴むことはできない状態であることが明確になりました。
第2段階:日本での訴訟提起と「公示送達」の利用
相手の居場所が分からない場合、「公示送達(こうじそうたつ)」という特別な手続きを利用することで裁判を進めることができます。しかし、これを裁判所に認めてもらうには「あらゆる手を尽くして調査したが、どうしても居場所が分からない」という厳格な要件を満たす必要があります。 弁護士は、入管記録やアメリカへの郵送結果などの調査報告書を証拠として提出し、日本の裁判所へ離婚訴訟を提起しました。この綿密な事前準備が認められ、無事に裁判所から公示送達(裁判所の掲示板に一定期間書類を掲示することで、相手に届いたとみなす制度)の許可を得ることができました。
本事例の結末
公示送達の手続きを経て裁判は適法に進行し、相手方が欠席のまま、最終的に日本の裁判所において依頼者様の離婚を認める判決(勝訴判決)が下されました。 相手と一切連絡が取れないという八方塞がりの状況から、無事に法的な婚姻関係を解消することができ、依頼者様は日本での新しい生活に向かって晴れやかに再スタートを切ることができました。
本事例に学ぶこと
当事者が外国人同士の「国際離婚」は、そもそも「どこの国の法律を使うか(準拠法)」「日本の裁判所で裁判を起こせるか(国際裁判管轄)」といった非常に複雑な法的問題が絡みます。
それに加えて「相手が行方不明」となると、個人での解決は事実上不可能です。日本の役所に離婚届を出すだけの協議離婚とは異なり、裁判所の厳格なルールの下で「所在調査」と「公示送達」という専門的な手続きをノーミスで進めなければなりません。 配偶者が海外へ帰国したまま音信不通になってしまった場合でも、弁護士が適切に介入することで日本の裁判所で離婚を成立させる道は残されています。「相手がいないから離婚できない」と諦めず、まずは国際的な離婚手続きや困難な訴訟に精通した当事務所へご相談ください。
弁護士 時田 剛志








